ボツSSとSSSの部屋 | ナノ
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補修終わった。



静かな図書室で柄にもなく勉強をしていた時、靴の音がしたので顔を上げると目の前には少しだけ不機嫌そうな顔をしたローがいた。
(おはよ)
図書室ゆえに、小声でそう言うと彼は黙ったまま持っていた鞄を下ろしつつ私の隣の椅子を引いて座った。

「ローも勉強しにきたの?」

顔を近づけてこそこそとそう聞くと、ローは「ああ…」と短く言って、そして私を小さく睨むようにする。「…お前、追加補習免れたんじゃねえのか?」。そう聞いてきたので、ふふっと私は笑った。
…そう。それはもう奇跡と言ってもいいくらいなのだが、私はロー様に勉強を教えてもらった甲斐あってこの度学力テストで平均点は取ることができたのだ!だから夏休みの後半は学校に拘束されずにすんでいる。「なら何でここにいるんだよ」。だからローがそう聞くのはもっともだ。でも仕方ない。だって…

「ルフィがいるから、ね。フフッ」

くすくす笑いながらそう答えると、ローは少しだけ顔を顰めた。

残念ながらルフィはテストが散々でめでたく追加補習組となってしまったんだよね(あとはゾロも)。だから彼らは今スモーカー先生にみっちりしごかれながら数学を勉強しているところで、私はここでそれが終わるのを待っているのだ。

「ルフィは磁石だから」

笑いながらそう付け加える。
ルフィは磁石だから、彼がいるところに皆が集まる。だから私もその強力な引力に引かれるまま学校に来ちゃってるんですよ。ローはそうじゃなかったの?
ローはチ…と小さく舌を打っていた。つい先ほど座ったところなのに、もう鞄を持って立ち上がろうとしている。「…あいつは…」。そして目線をどこかわからない所へ送りながら呟くようにそう言った。

「麦わら屋は…午後イチでどっか行くって言ってたぞ」
「え!うそ!聞いてない」
「さっき仕入れた情報だ」
「えー!せっかく待ってたのにー!なんでメール送ってくれなかったんだろ!もう!皆は知ってるのかなぁ…」
「他の奴にも伝えておいた」
「そうなんだー。あーあ」
「だから…」

まさかの事態に不満げにため息を吐いていると、ローは何かを言いかけて、けれど少しだけ言いよどんだ。でもすぐに私をちらりと恥ずかしげに見つめるなり言った。「だから午後からは俺に付き合え」…と。私はしばらく目をパチパチ瞬かせた。今何と?付き合え…とな?

「えー。ローと私の二人だけで??それじゃつまんなくない??」
「つまらなくは……させねぇよ。………お、お前を……驚かせて…やろうか」
「…え!……それって…」


私はローがモゴモゴと言ったその台詞に、目を見開いていた。まさかだけど…と言いかけると、ローの顔が少しだけ赤らんだ。
それは想定外でした。
私は思わずローに詰め寄った。

「まさか…、あのデパート屋上にできてる期間限定のお化け屋敷へ行こうってハナシ?!」
「ハ、ハァ?」
「アレ、マジで怖いらしいよ!!途中退出できないって友達が言ってた!!それでも行きたいの!?え!?ロー、そういうの平気系??」
「…いや…その…」


まさかの意外だったそのお誘いに、私はハー!と思わず驚きのため息を吐いていた。ローってそういうの好きじゃないと思ってた。そんなローは今、どうしてだろう、怒ったような困ったような顔をしていた。でもまあ、いいや。私は急いでノートや教科書を片付ける。

「でもちょうどよかった!気になってたのは確かなんだよねー♪じゃ、行こ行こ!」

そう言うと、ローはえ!と何でだか驚いたような声をあげている。「どしたのー?早く行こうよ!思い切りギャーって驚いちゃお!」。歩き始めた私が動かずに立ちすくんでいるローに振り返ってそう言うと、彼は慌てて鞄を肩にかけ直して「お、おお…」と私を追いかけた。



「まっさか、ローがお化け屋敷好きとはねー」
「…今だけな…」
「え?何か言ったー?」



私が首をかしげると、ローはそれには答えなかった。「まぁ、今回はこれでも構わねぇ」…と何故かそんな事を言ってくる。なんだかずっとローとのやりとりが頓珍漢な気がするけど…まあいっか。立ち止まって話していても暑いだけだし、ね。


「夏休みって感じだねー」
「ようやく…な」


だからそう言って、デパートへと向かった。
眩しい太陽の光が降り注ぐ中、駅までの道々影を見つけてキャーキャー言いながらそこへ入りつつ歩いていると、ローと二人でも結構楽しかった。






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