一万打リクエスト小説! | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
「それでも愛しいのだから不思議な話」

生理的な欲求に身を任せただけらしい・・・と言えば「ああ、それな」と納得して共感もしてあげられるんだから、男という生き物は本当に理解不能だ。
ハァ?!
・・・私はなのでこの場から男共を追い出してこの集まりを女子会に切り替える事にした。

「お前が呼んだんだよな?!」

キッドやキラーが呆れたような顔で玄関で振り返ってそう反論するも、私が「さっさと去れッ!男なんて生き物はこの世にいらん!!」と包丁を持った拳を強く握りしめれば「わーったよ!!」・・・と慌てたようにして靴を履き始めた。
皆でご飯食べようって誘った割に、一口も食べさせないまま追い出してしまうのだから多少は申し訳ないか・・・とも思ったけど、納得も共感もできない理由で浮気なんかしたアホバカローの味方するんだからやっぱり締め出されて当然。そもそもこれはローをこき下ろす会なんだから。
「なのに、なんで麦わらは残ってんだよ!」
「は?いーのよ!ルフィは中性みたいなもんなんだから!」
「あっはっはっは!なーんかよくわかんねーけど、飯食えるんならなんでもいーや!ナナシ、早く食わせろ!」
「意味わかんねえな・・・。チ・・・。まあいいよ。ほどほどにな。じゃあなナナシ」
「ばいばーい!キッドは絶対に浮気するんじゃないよー」
「バレねぇようにするから心配いら・・・グハッ!」
私の投げた皿が思い切りキッドの顔にぶつかった。あははっ!ルフィがお腹を抱えて笑っていた。痛ぇじゃねえか畜生…。そうブツクサ言いながらキッドたちが帰って、私はそして茹でてソースと和えたパスタを大皿に盛って部屋のテーブルにどかんと置いた。ほわほわと上がった湯気にルフィをはじめ、残った女性陣がみんなきゃーって嬉しそうにした。

「いただきまーす!ナナシって、怒ると料理の腕振るいまくるよねー♪あたし達はお腹膨れるから嬉しいけど♪」
「うっまそー!じゃんじゃん食ってやるからどんどん作っていけ!」
「フフ。おいしそうね。じゃ、いただこうかしら」
「ありがとーナナシ!いただきまーす」
「ナナシちーん。このパスタすっごいおいしそうだねっ!」
「キャベツをこれでもかっていうくらい細く細く切りまくって・・・、肉をボッコボコに叩いて柔らかくして・・・、灼熱の油で揚げまくってやる・・・」
「トンカツ!トンカツ!!」
「人参もジャガイモも玉ねぎも鶏肉も…牛乳でその原型も留まらないほどにグラッグラに煮込んでやる・・・」
「シチュー♪」
「角が折れるくらい泡立てた生クリームにかち割った卵とグッチャグチャにつぶしたイチゴ突っ込んで固めてやる・・・」
「アイスクリーム!」

私はまるで呪詛のようにそう呟きながらまな板の上のキャベツにザクっと包丁を突き刺した。
あー苛々する。そしてその原因を思い出して更に苛々した。
今朝知らない香水の香りと共に家へと帰ってきたロー。
まさか・・・と思って問いただしてみれば、酔った挙句にバーで知り合った女とイチャコラしてました・・・だと?
何でそんな事したのよ!と更に問えば、謝ることもせず、男はその生理的欲求には抗えないんだ素直に身を任せたんだとかなんとか言ってくるし・・・。
私はカチンときて、ローを蹴っ飛ばして家から追い出した。
同棲を初めて半年。
いろんな場面でローが側にいるその生活に慣れて、何もかもが二人分あることに特別感よりも安心感を覚え始めた矢先の出来事・・・だった。
ダンッダンッダンッ!
切り刻まれて盛り上がっていくキャベツの細切りを見つめながら、それらの事を今一度思い出すと不覚にも涙腺が緩んで途端に泣きだしそうになる。そこをぐっと包丁を持つ手に力を入れることでどうにか耐えた。皆に背を向ける作りのキッチンでよかった。こんな顔をして食材を切っていく私なんてとてもじゃないけど皆には見られたくない。

トンカツを揚げて、とろとろに煮込んだシチューの鍋をテーブルに置いて、他にもこねにこねまくったハンバーグやら混ぜすぎるくらい混ぜたかやくご飯やら、そして最後にはミントを飾ったアイスクリームを振舞うと昼間から長時間料理し続けた疲労が一気に身体に押し寄せてきて私はソファにくたりと寝転んだ。
ずーっとそれらを食べまくり、他愛もない話を決して尽きることなく話し続け、陽気な空気を振りまいてくれた彼女らはそんな私を見てふ・・・と優しく笑った。ナミちゃんは私の側に来て座り、頭をよしよしと撫でてくれ「ほんっと、ローってばゲスね!」と言ってくれた。「ひどい男だわ」「最低の人間!」「いつか痛い目みるにきまってる」「ってか今すぐ地獄に落ちればいい」「あの包丁で刺しちゃえ」「そうだ報復しよう」「全員で引っぱたこう!」「俺もぶん殴ってやる」・・・。他の皆はそんな風に言い連ねてくれて、私はえへへ・・・と力なく笑った。

「ごめんね。嫌な感情抱えながら作った料理食べさせて」

そう言うと、ナミちゃんはブンブンと首を振ってぎゅっと抱きしめてくれた。「すんげーうまかったぞ?」。そう言ってくれるルフィに世の中彼みたいな男ばかりになればいいのになぁと心底思った。


そんな皆が後片付けをしてくれて帰って行った深夜近く。
遠慮がちに叩かれるドアのノックの音がして、それが誰なのかすぐにわかる自分が嫌になった。極度に疲れた身体の所為で起き上がることも億劫で、暫く無視していたけれどやはりノックの音は止まらない。ああ、そうか。鍵も持たないまま追い出してしまっていたか・・・という事に気が付いてよろよろとソファから立ち上がり玄関ののぞき穴から外を見れば案の定ローがいる。
ギイ・・・
ゆっくり扉を開けてあげると、やつれた顔したローが伏し目がちにしつつ「入っていいか?」と小さい声でそう聞いた。
料理に全てをぶつけ終えて、もういろいろとからっぽだった私はこれ以上は怒る気にも責める気にもなれず黙って頷いて背を向けた。

「ハァ・・・」

靴を脱いで、家に足を踏み入れるなりローは大きくため息をつく。ハァ・・・って。ため息をつきたいのはこっちだよ。
落ち着いたら・・・今後のことについて話さなくちゃなぁ。
浮気をしたローとなんて・・・もう一緒にいたくなんかない。
きっとローも蹴っ飛ばして家を追い出すような粗暴な女なんて嫌になっただろう。
・・・そう思って私こそため息を吐いていると、ドサ・・・という音がしてえ?と振り返ればローが床に崩れるようにして倒れていた。

「え?」
「・・・」

一瞬そうなった意味がわからなくてそんなローを凝視した。しばらく凝視して、ああ倒れてる・・・ってこの状況を理解して慌てて彼に近づいた。ローは酷い顔色をしていた。「ど、どうしたの・・・」。思わずそう聞くと、彼は一言言った。


「・・・腹減った・・・」


はい?
私はそのセリフの意味がわからなくて目をぱちくりさせる。お腹が空いた?え?どうしたどうした。本当に意味が分からない。

「・・・お腹空いたの?」
「・・・ああ。朝から何も食ってねぇ・・・」
「・・・何でよ?」
「・・・気づいてねぇのかよ。俺の財布はこの家に置いたままだ」

あ。
そう言われて、私はローがいつも帰宅すれば車の鍵や財布やらを置く玄関のカゴを見た。・・・確かにそこにはローの革財布が置いてあった。ついでに言えば携帯も。
どうやら私は鍵どころかそれらを持つ間も与えずに彼をここから締め出していたらしかった。ああそれで何も食べられず、しかも誰かに連絡も取れずにいたというわけか・・・。私はそれでようやく彼の倒れるほどの極限の空腹に納得した。

「はー。・・・お腹空いたのならバーにでも行って知らない女にでも奢ってもらえばよかったんじゃないの?」

嫌味のつもりでそう言ってみるも、ローはすぐさま「できるわけねぇだろ」・・・と舌打ちと共にそう言った。イチャコラ云々はできたくせに。

「・・・なんで取りに来なかったの・・・」
「・・・家の前にまでは何度か来たが・・・入れる状況じゃなかった。午後からずっとナミ屋や麦わら屋と家でパーティーしやがって。あの場にのこのこ入って行ったなら俺はフルボッコだ」
「まーね。確かに」
あの場にいた大勢から罵られて、刺されて、引っぱたかれて殴られるだろう。

するとグウゥゥ・・・と小さなお腹の音がして、ローがチ・・・という舌打ちと共に顔を赤くした。
思いがけず断食という報復もローに与えていたらしかった私は何だかかわいそうになって、思わずそれにクス・・・と笑ってしまう。

ローはそんな私を見て怒ったように目をそらし、けれどその目を閉じて次に開けた時には申し訳なさそうな表情と共に「悪かった…」とそう告げた。「・・・もう絶対にしねぇ」・・・とも。
「こんな目にあわされるのはもう懲り懲りだ」
再び鳴るお腹をさすりながらハァ・・・と項垂れるローに、私はやれやれと疲れ切った身体でも彼のためにキッチンに立ってあげた。料理好きにとって空腹を訴える人間は・・・残念ながらどんな人であれ見離せないってやつなのだ。

「もう食材が卵とお米しかないや」
「・・・ハァ。パスタにトンカツにシチューにハンバーグやらはもうねぇのかよ」
「ないよ。ルフィがいたんだもん」
「・・・チ」

きっとローはそれらの匂いを玄関の前で嗅いで、それもまた拷問だったに違いない。私はキッチンで彼に背を向けた状態でクス・・・とまた笑ってしまった。私が冷蔵庫にある材料で作ったそれらの料理はローの好物でもあったから、ね。


お鍋でコトコト、シンプルに卵粥を作ってあげながらそう言えば・・・と、ふと聞いた。
「喉乾いたでしょ?」
するとローは言った。


「公園で水飲んだ」
「え?ホントに?!ブフッ!」


私はあまりに意外だったその告白に、不覚にもお腹を抱えて笑い転げてしまう。
それでもう、本当に極めて不憫すぎた本日のローを全部許してあげる気になって、尚且つそんな情けない彼の姿を想像すれば悔しいけどどうしようもなく彼をカワイイとすら感じてしまって・・。

「しばらく飲み物は水だね。禁酒を言い渡す」
「・・・わかった」

・・・だから女という生き物もまた理解不能だなぁ・・・と。
クス、と笑いながらそう思ってしまっていたのだから不思議な話し。





名無し様へ、あとがき♪


[ back to index ]