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「きっと誰よりも焦がれてる」


たかだかリボンひとつ結ぶのに人生で一番時間をかけたかもしれない・・・と感じた午前10時。
そのくせそれを覆い隠すようにロングTシャツなんて上から着込むんだから私ってば何やってるんだろうな。「ナナシまだー??」。それにさっきからもうナミちゃんに20回くらい同じセリフ言い続けさせてる・・・。しょうがない、もうあきらめて出よう。私は深呼吸をして更衣室のカーテンをそっと開けた。

「ど、どう?」
「いや、Tシャツ着ててわかんないし。それにそれは男性陣に聞いてみましょうよ」

ナイスバディを三角ビキニで惜しみなく晒しているナミちゃんはTシャツ姿の私に一瞬呆れ顔をするも、まあいいかとすぐに笑顔になって私の手をぐいぐい引っ張った。
夏休みに突入したばかりの7月の晴天の今日。
私たちは仲良しグループで海へと遊びに来ていたところだった。
クーラーの効いた更衣室から一変して、外に出てみればそこはすでに灼熱に近いくらい暑い。眩しい太陽が白い砂浜や海面にあたってそこら中がきらきらしている中、前を歩くナミちゃんの白い肌もまたきらりと光った。うーん。美しい。

「お待たせー」
「あー!やーっと来た!お前ら支度遅ぇんだよー。俺らひと泳ぎしちまったんだからなー」
「ご、ごめんね」

海水で濡れた髪をかきあげながらルフィがそう不満を述べるも、ニシシ!といつもの笑顔でそう言いながら砂浜を歩いてくる。私はそっとナミちゃんの身体の後ろに隠れた。私たちの姿を見止め、どんどんと海から上がってくる男性陣がこちらへと近づいてくるから恥ずかしさは募るばかりだ。
「ナナシおまえ何で隠れんだ?」
「いやその・・・だってねぇ」
不思議そうにそう聞くルフィに、私は俯いた。

「だー!もう、そのTシャツ脱ぎなさいよ!!意見聞きたいんでしょ!?ほらぁ!!」
「きゃーー!!」

おどおどしている私に、ナミちゃんは強行手段みたいにしてシャツの裾をつかむとぐいっとそれを引っ張り上げた。「いやー!」「着てたら泳げないでしょーが!!」「着てても泳げるってー!」「じゃーなんで水着買ったのよ!!」「だだだだって!ナミちゃんが買おうっていうからッッ!」。持ち上がった布の中でそう言いながら脱がされまいと必死に抵抗を続けてみたけれど、ついにはあっけなく私の防壁は取り払われてしまった。途端に感じる皆の視線視線視線。

「・・・」

集まった男性陣は一斉にしてみんな同じ動きをした。私の顔を見て、そしてついーっとその視線をつま先にまで落とす。そしてまた見上げて私を見る。その顔はそれぞれに個性があって、私はそれを一瞥するとううう・・・と唸りながら目を伏せた。

「どう?率直な意見言ってあげて」
「どうって。別に単なる水着だろー?あ、おまえのと色は違うな!その色好きだぞ」
「いいんじゃねぇか?」
「ナナシちゅわーん!もう俺卒倒しちゃうから〜!!ヤバイからぁあ!!」
「おお!!ななな何というか!夏万歳って感じ・・・だよな!うん!夏最高!」
「・・・」

皆がいろいろと言ってくれる中、ローは一人無言だった。私がそっと視線を送ると、彼はぱっと目をそらして、その目はなんだか不機嫌そうに歪んでいるのがわかった。


「ナナシ、タンキニとかサロペットとか・・・、肌が隠れるやつばっか選ぼうとしたからねー。やっぱりビキニタイプにして正解だったね。でしょ?」
「そ、そうかな?」
「・・・」
「ナナシやっぱ、胸CじゃなくてDだって。胸に入れてるパットもっと薄いやつでもよかったかもね!そうじゃない?」
「・・・そ、そうかな?」
「・・・」
「あ!もうあいつら海に入っちゃってる!あたしも行って来よーっと。じゃあね、おふたりさん」


そしてナミちゃんはクスって笑うとパチンとウインクして一気に海へと走って行った。ルフィやゾロ、サンジにペンギンはすでに海の中にいて「あはは!」と大声で歓声を上げている。私は側に立ったままのローをおずおずと見上げた。彼は相変わらず難しい顔をしていて、視線はどこかわからない場所へと向けている。私はだからそっとため息を吐いた。


これはお店で何時間も試着して、ナミちゃんがもう勘弁してぇ!って言うくらいに吟味して吟味して、それでようやく決めて買った水着・・・だった。ローと行く初めての海。否応なしに心が躍った。
彼の好きな色にして、ナミちゃんがぜったいにそれがいいからってアドバイスしてくれたから恥ずかしいけどお腹の見えるデザインにした。
似合うな・・・って少しでも言ってくれれば・・・と思っていた。
けど・・・。


「に、似合わなかった・・・かなー??」



私は無言を貫くローに慌てておどけたようにしてそう言ってみる。


「え、・・・と。ま、まあ、ナミちゃんと・・・並んじゃうと・・・ダメだよね。あ!!ナミちゃんいなくてもダメかもしんないけど!!わたし平凡だし!・・・あ!えっと・・・。お、泳ぐ??」
「・・・」
「ロー?」
「・・・」
「・・・」
「・・・あー。眩しい・・・な」


・・・。
私はようやく出た彼のその言葉に、雲一つない晴天の空をちらりと見上げた。確かに真夏特有のぎらぎらした太陽の光に思わず目が細くなる。


「ほんとだね。眩しい」
「・・・あー。・・・寒くねぇか?」
「え!?寒いって・・・。そんなわけないよ!暑すぎるくらいだよ」
「・・・そ、そうだよな・・・。あー。・・・日焼けするぞ・・・。いいのか?」
「あ、うん。今日SPFとPAの一番高い日焼け止め塗ってきたんだ。だからだいじょうぶだと思う」
「・・・そんなものがあるのか。・・・あー。ッ!クソッ・・・!・・・紐が・・・ほどけかけてるぞ」
「え?!」

そう言われて慌ててビキニパンツのサイド部分に目を遣ると、さっきのTシャツ攻防戦で指が引っかかったのか、確かに片方のリボンが緩くなっていた。あー!せっかく時間かけて結んだのに・・・。私は慌てて身体を捻って少し身を屈めながら紐に手をかけた。「あああっ」。ローが妙な声を上げた。「え?」。あまりに変な声だったので思わず顔を上げてローを見つめると、ローはクソ・・・と言いながら口に手をあててまたよくわからない方角を見つめていた。

「どうしたの?」
「・・・何でもねぇよッ。・・・あークソ・・・」

そう言ってまた口ごもるローの濡れていた身体は、容赦なく降り注ぐ日差しでもうほとんどが乾いたみたいになっていた。そして髪だけがまだ濡れてそこから滴を垂らすその姿、・・・加えて何とも形容しがたい顔して眉をひそめているローは色々と・・・奇妙だった。それにもう日焼けしかけているのか、顔が赤くもなっている。


「おーい!早く来いよっ!ナナシ!トラ男!!」


遠くの海で、ビーチボールを掲げたルフィが手を振りながらそう呼んだ。「はーーーい!」。私はローから目をそらすとそれに大きく手を振りかえしてそれに答える。
ぽーん
投げられたボールは砂浜に落ちて、私は近づいてそれを拾おうと腰を曲げた。
「あああっ!」
また背後でローの妙な声が聞こえた。


「どうしたの?だいじょうぶ??」
「・・・何でもねぇ・・・」


ボールを持った私に近づくローに首をかしげながらそう聞くも、ローの視線はやっぱり私じゃないどこか別の場所へと送られていて、そしてやっぱり不機嫌そうな顔のまんまだ。
はー。
こんな水着、買わなきゃよかったかな・・・。おとなしく布の多いタイプにすればよかった。ちょっとでもローの気を引けたら・・・、ちょっとでもドキドキしてもらえたら・・・だなんて。思うだけ無駄だったかもしんない。


「次はみんなで山に行きたいね」


なので思わずため息と共にそう言った。
すると隣のローがぼそりと呟くように言った。

「今度は・・・二人で海に行こう」

・・・って。


「え?」


そう言って私からビーチボールを奪って颯爽と海へと翔けていくロー。
彼はこうも言った。
その時私の心臓がドッキン!と今年一番くらいに跳ね上がって顔が真っ赤に焼けた事・・・、彼は気づいてくれただろうか?



「水着が似合いすぎてて・・・あいつらにはもう見せたくねぇんだよ」









さや様へ、あとがき♪


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