赤いシャーペン
思わずぽかんとしてしまった。
上からすいませんー!と声が聞こえる。あれは何部だろうか、ていうか水をそんな大量に捨てることなんてあるのだろうか。
とりあえず色々つっこみたいのだが、それ以上につっこみたいのは緑間である。
お前なんかそういうのはスタイリッシュに避けろよと言いたい。水浸しの緑間はさっきから動かない。停止である。
「…ねぇ」
「何なのだよ」
「一応前提として言っとくけど、私占いとか大嫌いなんだよね」
「…何?」
「たださ、えーっと、…占い信者にひとつ問いたい。おは朝?の占いってのは当たるの?」
「当たり前だ。俺は人事を尽くしている、そしてラッキーアイテムも持つことでそれは完成するのだよ」
意味分からん。
「……」
「……雛畠、赤いシャーペンを持ってないか?」
「えーっと、」
「本日かに座は12星座中最下位なのだよ。このままだと俺は死ぬかも知れん」
正直おおげさな、と思った。
思ったけど、マジで死にそうだなと感じたので、私は鞄を開けた。
筆箱の中にある、その辺で売ってる安いシャーペンだ。こんなので彼の命が救われるのかは知らない、が。
ライバルに死なれるくらいなら、と無理矢理私は理由をつけることにした。
「はい」
「…雛畠、」
「あげる。安いやつだし。緑間は私のライバルだから死なれたら困る」
そういうことにした。
占いは嫌いだ。だが彼はどうやら【当たる人】なのだろう。知らないけど。
「…雛畠は何座だ?」
「は?しし座だけど」
そう言えば、緑間は目をぱちくりさせた。そしてにこりと、笑った。
「…やはりここまで当たると恐ろしいな、」
「ん?」
「何でも無い、行くぞ」
「…仕切んな」
ちょっとだけ、私は彼を睨みつけといた。