赤いシャーペン
夏が近付いてきた、ある日。
美桜と梨子は相変わらず部活に勤しんでいる。ただその日は少しばかり話が違った。
「練習試合?」
「そ。だから明日の土曜、女バレはオフになったのです!」
「良かったね、たくさん寝れるよ」
「ちょ、何でそういう思考になるかなー咲穂は」
その報告をしてきたのは梨子だった。
で、何が言いたいのかといえば。
「あのね、美桜と見に行こうと思ってるの」
「何を?」
「バスケ部!美桜と高尾くんをくっつけるチャンスだと思うんだよね」
「ほー、…で?」
「咲穂どうせ暇でしょ?一緒に行こ!」
暇と決めつけるな、と言いたかったが実際暇な私にその言葉は発することは出来ない。くそ。
というわけでライバル緑間がいるというのに何故か私はバスケ部の練習試合を見に行くハメになったのだ。
当日、美桜と梨子と校門前で待ち合わせて学校に入ろうということになった。ただ制服じゃないと学校に入れないらしく、そこは仕方無く諦めて制服にした。いや、だって暑いじゃん。
で、まぁその当日になったわけだが。
「……梨子の野郎、」
私はキレる寸前なのである。
「あのさ、私は梨子と美桜が来るからここに来たんだよ?何でわざわざお前が出てくるんだよ、おい緑間」
「それはこっちの台詞なのだよ。全く、高尾が校門に行けばラッキーアイテムがあるとかどうとか言うから来てみれば、お前だったとはな。雛畠」
「ちなみにだけど美桜と梨子はもうそっちにいた?」
「あぁ」
「よし、ちょっと喧嘩売ってくるわ」
何でわざわざ緑間と会わせるのか、これはもう戦争レベルで喧嘩売るしかない。
そう思って進もうとすると、緑間がおいと声をかけてきた。
「…何」
「雛畠、赤いシャーペンは持っているか?」
「赤の?」
「ラッキーアイテムなのだよ。今日買いに行こうと思ったのだが高尾に邪魔されてな」
「ほう、じゃあ高尾にも喧嘩売らないとね」
ちなみにだが。私は占いが大嫌いだ。
だから例え赤いシャーペンを持っていても彼に貸すつもりは毛頭無い。
無い、のだが。
バッシャーーーン!
凄い音と共に、緑間の真上から水が落ちてきたのだった。