跡部のせいで不安にかられる
I can expect it. I understand it somehow. However, I want you to betray it.
予想とは良いものだけが全てでは無い。
そして悪い予想というものはえぐいほど当たるものだ。
女として生まれた人間は、言葉通り「女の勘」ってのがあってしかもそれは高確率で当たる、とされている。
私はあまりそういうのは当たらないのだが、嫌な予感はさすがに理解できた。
そしてその予感を、裏切って欲しいと、今、心から思う。
「…それで、景吾」
「……」
「話って、何?」
数日前に彼から久しぶりのお誘いがあった。
話がある。直接言いたいんだが、いつ空いてる?
ざっくり言えばそういう文面だった。そしてこの時、嬉しかったのと同時に不安を覚えた。
ずっとここのところ、連絡はすぐに途絶える、ずっと誰かとの用事が入ってる、そんな調子だった彼が、突然話を持ちかけて来たのだ。
どんな話か。怖くて聞けなかった。
放っておいたら自然消滅しそうな私達のカップルは、今別れの危機に扮しているのでは無いか。
それを錯覚だと思いたい。だが、思えない。
私は空いてる日と時間を数日後に設定した。そして空白の数日間で頭をすっからかんにした。
別れ話なら泣かないように。
良い話なら笑えるように。
そして朝は平等にやってくる。
時間も平等にやってくる。
玄関を出る時に私は、鏡に向かって笑顔をひとつ作って外へ出た。
女の勘が、外れてくれと強く願いながら、私は家を出、景吾と落ち合い、今まさに話を切り出そうとしている。
もし浮気でも許してあげよう。それは私に魅力が足らなかったから。
もし私に飽きたのならそれも許してあげよう。
彼もそれなりの勇気を持って話そうとしている。なら私は、それ以上の勇気を持って臨む。
景吾はとてもばつの悪そうな顔をし、しばらく無言だった。
心地よかった無言も、今では不安でしかない。
「風祢、俺は……」
彼はようやく、口を開いた。