赤司にわがままを叶えて貰う
あー、だめだ。会いたい。
こうも数週間会えなくなると、恐ろしく会いたくなる。
誰にか。それは私の彼氏こと赤司くんその人である。
夏休みに入り、特に部活もバイトもしていない私は暇を持て余していた。
しかし赤司くんは連日バスケに勤しみ、部活が終わって帰宅した頃に私と少しメールを交わす。
つまり、全然会ってないのだ。
さすがに寂しくなる。試合があれば見に行くが特に何かあるわけでも無く、淡々と時間だけが流れる。
こんなに寂しいなら夏休みなんていらない。
…そう、愚痴をこぼしたくなった。
でもこんなことを赤司くんに言うことは出来ない。バスケに集中して欲しいのもあるし、何より…わがままって思われたく無い、から。
けど会いたい。その衝動で、私は気付けば部活終わりの時間に学校に来ていた。
「……赤司くん、」
バスケ部の人達と校門から出てきた赤司くんにそう声をかけた。
彼は、見たことも無いくらい驚いた様子でメンバーと別れてこちらにやってきた。
「どうしたんだい」
「…どうって、理由は無いんだけど…」
「……」
「……」
「……家まで送るよ」
そう言って私たちは歩き出した。
色々話したいこともあるのに、言葉が出ない。
久しぶり、とか。会いたかった、とか。言いたいことはたくさんあるのに。
気付けば、私は泣いていた。
ふと振り返った赤司くんはそれを見て更に驚いた。
「……風祢?」
「何、」
「……待っててくれてありがとう」
「っ、」
「会いに行けなくて悪かった。風祢が今日来ると思ってなくてびっくりしたけど」
そう言って赤司くんは私の目から流れる涙をそっと拭った。
「どうしたらいい?」
「へ、?」
「いつも我慢してくれたご褒美。風祢のわがまま、今なら全部聞いてあげてもいい」
「……じゃあ、」
とりあえず、抱きしめて。
そう言い終わる前に、彼は私を抱きしめた。