残念すぎる件について
まず分かって欲しい。
人間は見た目で判断なんかしてはいけないということを。
今年この陽泉高校に入学した私達1年生の間には凄い噂があった。
バスケ部に、すっごいイケメンの先輩がいる。
これに尽きた。私はここに来てから2回見たがそりゃもうイケメンだった。
1回目は部活勧誘期の時。男子バスケ部のブースで一際輝くオーラを放っていたのがその先輩だった。
右目にはセクシーな泣きボクロ。左目は少し前髪が長くて見えづらい。けどイケメンだし、と私はその時あまり気にはしなかった。
2回目は、つい最近のことだ。
そしてこの2回目こそが、彼……氷室辰也先輩の残念さが露わになったのだ。
携帯を見るとメールが来ていた。
あぁまたかと。私はお昼ご飯を持って席を立った。
「あれ?華須美どこいくの?」
「んー、ちょっと用事」
誰も知らない。私が、氷室さんと関わっているなんて。
ていうか知られたらそれこそ死刑ものというか。だから基本的には知らないフリ。まぁ学年も違うから会うことも少ないしいいんだけど。
なのにだ。たまにこうして先輩からメールで呼び出されるのだ。理由はただひとつ。
ガチャ
「こんにちは、久田さん。早速だけどこれ、見てくれない?」
屋上の扉を開けてすぐ閉める。普段は閉まってるんだけど何故か氷室さんは入れる。ピッキングとかよくないんだけど…ね。
私はお弁当を足下に置いて、そして目をキラキラさせながら私の元にやってきた氷室さんを見た。
「これは…何ですか」
「見て分からない?召喚用の魔法陣!」
「現実に済む人間なんでちょっとよく分からないです」
ででーんとチョークで書かれた、床の魔法陣。何を召喚するのやら。ていうか何も召喚出来ませんからね!
しかし氷室さんは聞かない。何やらぶつぶつ言い出した。呪文か。ていうか右目にカラコン入れてる。何でわざわざ見える方だけ赤のカラコンにしたのか。
……さてお分かりだろう。
彼は中二病なのである。