警備が心配な件について
さて着替えた私は少し大きめの制服に身を包み、ウィッグを被り更にニット帽を被るという徹底ぶりのお陰で見た目は男の子になった。
…背はとても低いが。この先輩の横に並んでると更にそれが浮き立つ。
「じゃあ行くよ、久田さんは喋らずに着いてくること」
氷室先輩がそう言い、私は小さく頷いて彼の後を追いかけた。
しばらくして男子寮が見えて来た。近付くにつれ心臓がバクバクしていた私だったが、特に怪しまれることなくそのまま難なく寮に入ることが出来た。
…大問題だとは思う、警備大丈夫かこれ。
「こっち」
氷室先輩はそう言って私を更に奥へと連れて行く。
階段を上るとどうやらそこは1年生のフロアらしい。知り合いがいるとまずいので顔を伏せ、氷室先輩についてくと足がパタリと止まった。
「敦、入るぞ」
どうやら紫原くんの部屋らしい。ガチャリと扉が開いて氷室先輩と私が入る。扉にしっかり鍵をかけたところで私は大きく息をついた。
「は、…入れるもんですね」
「意外とね。さ、勉強会始めるよ」
中に進むと紫原くんと福井先輩、岡村先輩が既にいて勉強会をしていた。劉先輩は用事で後から来るらしい。
紫原くんはちらっとこちらを見ると、小さく誰?と呟いた。久田だよと言った瞬間の驚いた顔はとても可愛かったのはここだけの話にしておこう。
「よし、じゃあ国語やるか」
「……」
「敦、嫌な顔しないで。せっかく久田さん来てくれたわけだし」
「……」
紫原くんはご機嫌斜めのようであった。