不良な件について
次の日。
何もなく放課後まできたのだが、問題はここからである。
放課後、男子寮で行うらしい勉強会。
どうやら部活は監督の意向で休みにしたらしい。そんなに紫原くんやばいのと思ってしまったがまぁ今はそれどころではない。
福井先輩は氷室先輩が迎えに行くと言っていた…てことは、やはりこのまま待つのが得策なのだろうか。
色々考えて、私は友達と別れを告げてひとり教室で待つことにした。
さていつ来るのか、そう思ってた矢先。携帯が小さく振動した。
From:氷室辰也先輩
Sub:待ち合わせ
いつもの屋上においで。
…了解しました。
そう思って私はすぐに屋上に向かった。
普段は昼間に来ることが多いのでこんな時間に行くと何やら不思議な気持ちになる。夕日とか見れるかなーとか考えながら私は屋上に進む。
いつもの屋上の扉を開けると案の定鍵は開いていた。あの人は何故勝手にここの鍵を開けるのか。ていうか何故開くのか。ピッキングだろうか、だとしたら不良である。
「来たね、久田さん」
そこには夕日をバックに佇むイケメンこと、氷室先輩。
…ただちょっと気になったのは、足元にある大きい鞄。何だろうか、嫌な予感がした。
「とりあえず着替えるよ」
「へ?」
「男子寮に行く必要があるからね、制服持って来たんだよ。サイズは多分合わないだろうけど何とかするから」
「あ、え?」
「着替えはこの鞄に入れてね、あとウィッグも中にあるから…」
「いやいや準備よすぎですよ!昨日の今日の話じゃないですか!」
「まぁそうだけど、俺は不可能を可能にする男だからね」
「逆に怖いですよそれ」
そう言うと、氷室先輩は私にそっと背中を向けた。
へ?と思わず声を上げると、先輩は後ろを向いたまま小さくため息をついて静かに言った。
「…早く着替えてね、一応、俺ら男と女だし」
……サーッと、血の気が引いた気がした。
とりあえず私は急いで服を着替えたわけだが、心臓が何故かバクバクしていた。