前世がある件について
「そうか、久田さんっていうんだね」
「うん。えーっと、赤司くん…だっけ」
「あぁ」
「とりあえずさ、その、羽で遊ぶの止めようか」
「遊んでない、力を少しお借りしているだけだ」
…あぁ、東京にまで来てまた中二病の人に会うなんて。
氷室先輩だけでいいよ本当にこういう人。なんでつくづく…。
「赤司くんは東京の人?」
「元々はね。今は京都にいる。ちなみに前世は堕天使」
「同い年なのに京都で一人暮らしかー…すごいね。あと前世は聞いてないし堕天使ならなんで今更天使の力が必要なの」
「僕が天使に戻るためさ」
「…さいですか」
この人は赤司征十郎というらしく、洛山高校というところに通うバスケ部員だそうですよ。またバスケ部か、もう中二病部でいいよ。
「ここには帰省で?」
「ううん、身内の不幸ってやつ。でもほとんど面識無かったから来た意味がよく分からない状態」
「そうか……」
「ちなみに赤司くんは?」
「大会さ」
ちら、と横目に見たのは先ほどの体育館だった。
聞けばもう大会は終わったらしい。メンバーと解散して実家に寄ろうとした時に私とぶつかったらしい。
「じゃぁ実家に戻らないと、」
「…後で大丈夫。そんなすぐ戻ることも無い。それより久田さん、よかったらメアド教えて欲しいんだけど」
「え?あ、うん」
あっさりと連絡先をゲットした彼は満足げにうなずいた。
氷室先輩の時もそうだが、周りに中二病と知っている人が少ないとこういう友人が欲しくなるのだろうか。
あまりそういうのは分からないが、きっとそうなんだろう。
だとしたらやはり、友達になってあげないといけないということか。
「華須美か、可愛い名前だね」
…前言撤回。なりたくない。
「また連絡する。今日はありがとう」
「え?う、うん」
そう言うと彼は振り返ることもなくその場から去ってしまった。