東京にもいた件について




それは2学期が始まる直前。

親戚のおじさんが亡くなったという、よくある身内の不幸で私は東京まで来ていた。

と言っても私とそのおじさんはそこまで面識があるわけじゃない。秋田と東京だし遠いから会うこともほとんど無いし、本当のところを言うと別に悲しいとかそういうのはなかった。

通夜も葬式も終え、次の日母と父はふたり揃って挨拶周りに行くと言い出した。

唯一の娘になる私はどうしても面倒で、せっかくだし東京観光したいなと思っても無いことを言って挨拶には一緒に行かなかった。

ただ家にいるのも暇だしということでふらりとその辺だけでも散歩しようと思った。普通に服を着て外に出たが、ここ東京だし化粧でもすべきか迷って、結局止めた。



「…なんか、秋田より狭い」



道路が、家が、目の前に広がる空間が。

秋田はのびのびとしてるから好きだけど、やっぱり都会ともなるとこうも狭くなるのかと思うと、私は一生ここでは暮らせないなと感じた。

ぼーっと道を進むと、ふと目の前に公園のようなものが見えた。

近づくとそこには大きな体育館…のようなものがあって、ついでに人がたくさんいた。しかも、大柄な。

何だここと思った私は、そこがバスケ部の大会会場なんて気づかぬままスルーした。何か純粋にここ怖いと思ったからだ。

そして振り返った瞬間。



思いっきり、何かにぶつかった。



「っ、あ、すいませ…」

「あぁ、こちらこそすまない」



ふと顔を上げると。

そこには赤い髪の、整った顔の青年がいた。

思わず息をのむ私に、彼は少し時間を置いて…そして低い声でぽつりと言った。



「…君、」

「?は、はい」

「その…携帯についている羽はどこで手に入れた?」



…ん?



「これ、ですか?」

「あぁ」



…デジャヴ?



「私、東京の人間ではないので…」

「そうか…それは残念だ」

「……」



…この人、まさかじゃないけど、…。



「あの、この羽がどうかしたんですか?」

「…気にすることは無いよ」

「……この羽は大天使様から頂いたもの、アナタには手に入れることができない」

「!」



一瞬だが。

目が、輝いた。



「……」

「……」

「……僕では、大天使様の力にはなれないというのか…!」



……。

決定。この人、中二病だ。



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