ピンチな件について
さて農作業を開始して一時間。
私と藍子は苗を植えたり雑草を抜いたりとしている中で、3年の女の先輩(髪をふわっと巻いてるからとりあえず藍子とふわ巻先輩と呼ぶことにした)と氷室先輩が鬱陶しいのは見えるだろう。
氷室先輩は作業すべく動くんだけど、ふわ巻先輩が鬱陶しいくらい作業しないうえに氷室先輩に絡む絡む。
見ていて、イライラした。
「ていうか作業妨害…」
「確かにねー。どうする華須美、話しかけないの?」
「話しかけてどうするのよ…」
どうせあのふわ巻先輩に睨まれるだけだと思うし。
そう思ってブチブチ雑草を抜いていると、おばあさんがヨロヨロとやってきた。
「ねぇ、ちょっとお願いしてもいいかい?」
「あ、はい」
「この外れに納屋があるんだけど、そこから鍬(くわ)を持ってきて欲しいの、頼んでも良いかい?」
「分かりました」
おばあさんに納屋の場所を教えてもらい、一人そっちに移動する。田んぼを歩いて抜けると山が出てくるんだけど、どうやらそこに昔から使っている納屋があるらしい。
暑い日差しの中私は田んぼを抜けて納屋を目指す。
…山に入った途端、道がえらくデコボコし出した。
まぁ山道だもんなーと思って上り坂を登る。右手は小さい崖になっている。落ちたらまぁ、死にはしないか。
そう思いながら進んでいると。
ガサガサ…
「?」
バサッ!!!
「わ、っ…あ!」
反対側から突然、カラスが飛び出してきた。
慌てて避けようとした私は右に逸れすぎて…そして。
足を思いっきり、踏み外した。