友人がいらない世話をしてくる件について


輝く小川。

爽やかな風。

見渡す限りの緑。



やってきました、奉仕活動日。

私の班の行く農家はお米を作っているところで、びっくりするくらい緑しか無い。

いや、秋田県民だし田んぼくらいは見たことあるけど、こんなに一面田んぼなのは初めてだ。おばあちゃん宅の周りでもこんなの無い。



「きれー…」

「今日一日頑張ってくれたら冷やした野菜食べようか」

「おばあさんありがとう!私冷やしトマトがいいです!」



藍子はそう言って農家のおばあさんと談笑する。人見知りじゃないって羨ましい。

私は人見知りというか、初対面からばりばり話せないからこういう時ちょっと複雑だ。

……複雑といえば。



「久田さん、ここ凄い空気が澄んでるね。小鳥達が僕達を歓迎してくれているよ」



何で一緒なの、氷室先輩。



「……あの、あんまそういうこと言わないで下さいね」

「そう言えば昨日、自分の部屋で新しい武器を考えたんだけど今度良かったら持ってくるね」

「話聞いて下さい」



いや、別に嫌では無いんだけど何でこの人も一緒なの。別にいいんだけどさ。

各クラスから3、4人がまとまって一つの班になるというのにこの確率の高さは最早何かがおかしい。

氷室先輩、久田さんと同じ班になれますようにーとか言っておまじないやってないよね?



「そう言えば、」

「?」

「こうして屋上以外で会うの、初めてだよね」

「あー…最初に会った時以外はそうですね、ずっと屋上ですね」

「いいね、こういう時に会って話せるのも」



にこりと笑顔を振りまく氷室先輩。本当にイケメンだ。

3年生組にいた女の先輩が氷室先輩の方をさっきからチラチラ見ているのがこっちから確認出来た。…退いた方がいいかな。



「それじゃあ農作業のお手伝い、よろしくねぇ」

「はーい!」



どうやら農作業を始めるようだ。おばあさんの声に私は移動する。氷室先輩も移動。

それを見ていた藍子がふぅん?とにやけたのが見えた。念のために言うけど、そういうのでは、無い。断じて違う。



「華須美も隅に置けないねぇ」

「別にそういうんじゃ…」

「でも3年のあの女の先輩、氷室先輩狙ってるよねー。ほら、もう話しかけてる」



気付けば着いてきていたはずの氷室先輩はあの女の先輩と一緒に話しながら移動していた。



「よし、」

「ん?」

「私が華須美のために一肌脱ぐか!」

「……はい?」



いや、いらないですそんなの。




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