断れない件について





移動した先は普段は誰も使うことの無い4階奥、旧資料室である。

さて何でこんなとこまで私は連れられて来たのだろうかと思っていると、少しばつが悪そうな顔をして福井先輩がこっちを見た。



「えーっと、その…久田」

「は、はい」

「単刀直入に聞くけど、氷室とどういう関係?」



はい?

思わず私は聞き返した。が、返ってくる言葉は同じものであった。氷室先輩とどういう関係か、である。

正直どういう関係も何も、完全に一方的に気に入られてるというか、とりあえずただの先輩後輩だと私は思っているのだが。…それでは何か問題でもあるのだろうか。



「…ねぇ、早く答えてよ。メンドーだし」

「あ、ごめんなさい」



しびれを切らしたのか紫原くんが文句を言う。や、ごめん、でも本当に関係が分からない。



「…その、ただの先輩後輩で、特に付き合ってるとかいう関係では無いです」

「でも知り合いだろ?」

「まぁ、話す程度の仲なのは確かですが…」



そう言うと、やっぱりなーと言わんばかりに先輩達が少し笑う。え、何故?

すると劉先輩がよしと言わんばかりに私に一歩近付いた。



「お願いするアル」

「へ、?」

「久田さんじゃないと出来ないことを頼むアル」

「は、はい…?」

「要は、氷室をどうにかしろって話だ」



岡村先輩が付け足す。そして何故か劉先輩にまた苛められる。

ていうかその、氷室先輩をどうにかって、どう?



「アイツが中二病なのは知ってるよな?」

「…存じております」

「なら話が早い。氷室な、中二病のくせにモテるだろ?隠してるから別にいいんだけど、最近ちょっとヒドいんだよ、それが」

「何かねー、試合中にもたまに言うんだよー、神がどうこうって」

「う、うわぁ…」



何やってんだあの人…。

とりあえず話は読めた、つまりその中二病を少し抑えろ、ということだろう。



「別に俺達には関係無いなら好きにしてくれたらいいんだけど、あまり表立ってやられると俺らが恥ずかしいし女の子が来なくなると岡村と劉のモチベーションにも関わってくる」

「ひどいアル」

「そうじゃ!ワシは関係無…!」

「でも前女の子来なくて落ち込んでたじゃん」



紫原くんに指摘された岡村先輩は可哀想なくらい嘆いてた。どんまい。

福井先輩はさらに話を続けた。



「だから最近氷室のお気に入りの久田さんに助けてもらおうと思って。どう?」

「え、えー…」

「まぁお礼は何でもするし、とりあえずバスケ部の威厳的な意味で助けて欲しいんだよ、よろしくな?」

「……は、はい……」



……Noとは言えません、私日本人なので。






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