集団リンチな件について
事件である。
いや、何が事件だと言われるとこれを事件とすべきか迷うところではあるのだが。
とにかくこの状況を説明しようと思う。
まず目の前にいるのはおなじみの氷室先輩……ではなく。同じ学年ではその名を知らない者はいないだろう、紫原くんである。
そして彼の周りには何故は氷室先輩を除いてだが、バスケ部のレギュラー陣がいる。さすがに私でも分かる。ていうか背、高。
160cmも無い私からだとこのレギュラー陣はもはや壁レベルである。唯一福井先輩だけがまだマトモなのだが、それでもこれはダメだろう。壁である。怖い。
「あの……何か用ですか……?」
ものすごい震え声で私は言う。
真ん中にいる紫原くんは首を傾げ、そして後ろにいる先輩たちの方を見た。
「……ねぇ、本当にこの子なの?」
「久田だろ?」
「そ、そうですが……」
「ほんじゃ正解だわ」
福井先輩がそう言う。何が正解だ、何が。
「悪ぃな、いきなりこんなことして。ちょっと用があってさ。とりあえずここで話すのあれだし、どっか場所変えていい?」
「え、あ、え?」
さっきから私はあ、とかえ、とかしか言ってない。のに、なぜか肯定と捉えた先輩+紫原くんは移動を開始した。
「何してるアル。ついてくるアルね可愛いお嬢さん」
「劉、怖がらしてるから止めとけ」
「ケツアゴリラのせいアル」
「ひどい?!」
……何だこの、状況は。