あの真田に好きな人がいる。
そんな噂が流れ出したのはいつの話だったかもう覚えていないけれど、当時の私は酷く落ち込んだものだった。
噂とは尾ひれが付き色々な想像が膨らむ物だ。しかしその反面日本人の忘れやすい性格から数ヵ月の内には誰も言わなくなる。今回もそうだと思っていたけど校内一の堅物に好きな人がいるというのは全校生徒に壮大な衝撃を与えたらしく、今でもまだ何かと噂されている。

「…真田先輩の好きな人か…」
「え、何。お前もしかして副部長のこと好きだったのかよ?!」
「…言ってなかったっけ?」

私の目の前で必死に英語の宿題を写していた赤也が私の独り言に大きく反応した。休み時間は後15分しかなくてその間に20ページ分を写さないといけないというのに赤也はいつからだよ!?としつこい女子の友達みたく問い詰めてくる。

「入学式、から」
「はあぁぁあ?!俺、お前と2年友達やってんのにそんなこと知らねぇんだけど!」
「いや、赤也に言わないといけない訳じゃないし…」
「だからって水くさいだろ!」

うーん?赤也は友達だけど、男友達だし恋バナは女友達にするものだと思うからしなかっただけなんだけど。赤也的はして欲しかったのかな?2年友達やってるけど未だに赤也の考えを掴めずにいるのはどうにかするべきだね。頑張ろう。

「水くさいって…。赤也が恋バナとかすると思わないじゃん」
「お前の中の俺って一体何なんだよ…」

私の中の赤也…。赤也があまりにも真剣に聞いてくるからこちらも釣られて真剣に考える。
第一にテニス馬鹿。入学式の日に校門で高々とあんなことを言うくらいだからテニスが好きなんだと思ってはいたけれどここまでとは思ってもいなかった。部活が休みで予定の無い日には突然連絡がきてテニスコートに連れて行かれるし。突然打つ相手が欲しいからと私にテニスを教え始めた。
第二に極度の英語嫌いということ。授業を聞いていれば良いものを寝て過ごし、自分で自分の首を絞めている。テニス部の2年エースが英語の赤点エースと先生の間で呼ばれる様になるくらい。
しかし、それ以上に赤也は私の大切な友達だ。

「赤也は大切な友達だよ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「……だよな!その言葉忘れんなよ!!」
「赤也じゃないんだから忘れないよ」
「俺が馬鹿だって言いてぇのかよっ!」
「馬鹿でしょ。後10分しかないよ」

黒板の上にある時計を指して云うと赤也は焦って宿題を写し始めた。さっき友達だって言ったときほんの一瞬赤也が悲しそうな顔をした。普通だったら見逃してしまうほどの些細な変化だった。
友達でいるのが嫌、なのかな?これからも友達でいたいって思っているのは私だけ?

「もういいや、こんな量出来ねぇよ。って、うわ。お前なんて顔してんだよ」
「へ?」

宿題を諦めた赤也がこっちを見たときにそう言ってきた。そんなに酷い顔してる?確かに可愛くはないし、不細工とも思ってなく普通の顔だと思ってたんだけどそんなに酷いのか。

「不細工って?そんなに酷い?」
「いやいや、そうじゃなくて!なんつーの?悲愴感溢れる顔してたからさ」
「…赤也が悲愴感なんて言葉を知っていたなんて」

茶化すと赤也は顔を赤くさせてうるせー!って怒った。それがなんだか可笑しくて笑ってしまう。

「やっと笑ったな。副部長のことで悲しいのかも知んねぇけど名前は笑ってた方がいいと思うぜ」
「っ…。ありが、とう」

まただ。赤也は真田先輩のことを言うときさっきと同じような悲しい顔になった。なんでそんな顔するのさ。赤也の悲しい顔が頭から離れない。先生が来て、授業が始まったけど気になって集中できないでいた。

ーーーーーーーーーーーーーー

放課後、私はまだ教室にいた。本来帰宅部の私は学校が終わったら委員会でもない限りすぐに帰る。どうして私がまだ学校にいるかと云うと赤也だ。赤也の態度が気になって仕方がなく、教室から部活をしている姿を見れば何か分かるかもと思ってまだ学校にいる。
それのついでに今日の宿題を片付けてしまっている。

「あ、赤也と真田先輩」

いつもと違う人とやるダブルスの練習なのか柳先輩ではなく真田先輩と組んでいる赤也。1年前なら真田先輩に目がいったんだろうけど今はそんなに気にはならない。きっとあの噂のせいかな。私も含め、真田先輩のことが好きな人って内気っていうか大人しい人が多いからあの噂で大半の人が諦めた。かくいう私もその1人。
真田先輩もそうだけど、テニス部ってこの学校のアイドル的な存在だから普通に生きるだけで黄色い声を聞いて、彼女なんてファンの女の子が怖くて作れないんじゃないかと思う。
そう考えると好きな人ができたのなら応援したいってどうしても思ってしまうんだよね。

「赤也…何か真田先輩に言ってる?」

テニスコートの中で赤也と真田先輩が話しているのが見える。けれどそれは赤也が一方的に当たっている様にしか見えない。どうしたんだろう?打っている様子に不自然なところなんてなかったからプレーに関してじゃないと思うけど。
赤也がいきなりコートを飛び出して校舎の方に走っていった。それを見てすぐに私は鞄を掴んで教室を飛び出した。

「赤也っ!!!」
「あっ……名前」

赤也は思った通り中庭にいた。ここは赤也の人気が出てくるまでよくお昼を一緒に食べた場所。私達が仲良くなった場所。

「な、なんで、学校にいんだよ…。帰宅部だろ…?」
「ちょっと、ね。それよりどうしたの?真田先輩と何かあった?」
「見てっ…!?…何でもねぇよ」

赤也は何かを隠す様に目線を泳がせている。赤也がこういうことをする時は大概聞いて欲しいことがある。
私は赤也の隣に腰かけて話しかける。

「嘘。赤也絶対何かあったでしょ。教室から見てたよ」
「…副部長が、か、彼女さんを連れて来たんだよ。それで今日、お前が好きだって言ってただろ…。それで、カッとなっちまって」

ガシガシと髪をかきながら話す赤也。その顔はまた、悲しそうだった。
どうしたら赤也は悲しい顔しなくなる?私に何かできることはないの?

「そう…。気を、使わせちゃったんだね。ごめんね」
「名前が謝ることじゃねぇよ!!俺が…勝手にやっただけで」
「じゃあ、ありがとう」

お礼を言うと赤也は照れて顔を真っ赤にさせながらはにかんだ。
その姿に胸がドキッとなる。その感覚は真田先輩を見たときによく似ていた。

「気を使ってもらったところ悪いけど、私もう真田先輩のこと好きじゃないよ?」
「はあぁぁあ?!」

もう好きじゃないってことを伝えると赤也は目を大きく見開いて昼休みと同じ声を上げた。

「あの噂聞いて、大半の真田先輩ファンは応援することにしたんだよ。結構それも噂になってたはずだけど?」
「俺知らねぇよ!!つかそういうことは先に言えよなぁ!俺お前のこと好きだったんだからさぁ!!」

…………………。

「は?」
「あ」

まさかこのタイミングで告白されると思ってなかった。しかも赤也から。
赤也も赤也で今言うはずじゃなかったんだろう。焦ってなに言ってるのかわからない。

「名前にとって俺が只の友達なのは知ってる!けど、俺は好きで。だから、いつか絶対俺に惚れさせてやる!今はまだ好きじゃなくても絶対させてやるからな!!」
「う、うん」

それじゃ、部活行ってくる!って言ってものスッゴいスピードで走っていった赤也。私はあまりのことに半放心状態。ぐるぐると頭の中でさっきの赤也の言葉が回る。
どうしようなんて考えていたらまた赤也が走ってこっちに来た。

「一緒に帰りてぇからテニス部見て待ってろよ!」

それだけ言ってさっきよりも速くテニスコートに戻って行った。

赤也は大切な友達。だけどそこから始まる恋っていうのもあり、なのかな。

友達からの

((やっべー!!言っちまったよ俺!))
(赤也あんなにハイペースで体力持つのかな?)


あれ?可笑しいな、これ最初は赤也の友達が真田と付き合う話だったはずなのに。赤也の小説に…。真田もそろそろ引退かな!!

初赤也短編です!!これ書くのにお友達サイト様の赤也読みまくりました!キャラがわからなかったんですよ…









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