※マフィアパロで死ネタです

苦手な方はご遠慮ください。









あの夜に全てを失った。

愛する人も

仲間も

全て自分の手で無くした。

「これで良かったんだよね…精市」

ーーーーーーーーーーーーーー

今日の任務はボスである精市と一緒の任務だ。ここ数週間精市は体調不良で任務に出ていなかった。やっと体調が安定して任務に出れるようになったのが一週間前。真田や他のメンバーの過保護のおかげで今日が任務復帰日になった。

「真田達の過保護も考え物だね。俺は大丈夫だって言っているのに」
「嘘でしょ。今だって走るのが精一杯の癖によく言うよ」

精市の体調について私がわからないわけがない。いつだって一緒にいてかれこれ15年の付き合いになるのだから。
隣を走る精市は少し眉間に皺を寄せて走っている。昔の精市なら任務が終わってもこんな苦しそうな顔はしていなかった。

数分走った所で目的地に着く。今回の任務は人身売買をしているファミリーの殲滅。私と精市なら何度もこなしてきたものだけど、今回ばかりは楽観視出来ない。

「精市」
「何?早く行かないと気づかれるよ」
「必ず、生きて」
「…………行くよ」

精市は私の言葉に返事をしないまま先を歩く。
不安は募るばかり。何が起こっても精市を守れるように私は周囲に神経を張り巡らせる。ちりが動く微かな動作でさえ見逃さない様に。
アジトを少し歩き回った所で人の気配を感じた。前方の部屋に待ち伏せているらしい。殺気も気配も消せていないまるで素人のよう。私達はさっと気配を断つ。すると部屋の中の気配がざわめいた。
いける。勝てると確信し私達は正面から部屋に入って行った。

「平気?」
「名前が守ってくれたから、俺は殆ど何もしていないよ」
「…なら、いいけど」

そう、それでいい。今回は殆ど一人でやる。今の戦闘だって50人ほどを殆ど一人で殺した。精市を生かすそれが私達部下の最優先事項。何も間違ってはいない。
浴びた返り血を軽く拭きこのファミリーのボスがいるであろう部屋に向かう。こういう情報は全て柳からだ。うちの参謀である柳の情報は信用できるし信頼できる。
警戒は解かぬまま部屋の前にたどり着く。

「気は抜くなよ」
「了解。ボス」

扉を慎重に開けて私達は中に入った。

ーーーーーーーーーーーーーー
「な、ボスっ!!!」
「精市?!」

私が大量の返り血を浴び冷たくなった精市を抱いてアジトに帰るなり他のメンバーが駆け寄って来た。
全員の意識は今はもう動かない精市へと向く。赤也とブン太は大粒の涙を流し、比呂士とジャッカルと雅治、蓮二は静かに涙を流していた。弦一郎は一人涙を流さず耐える様に拳をキツく握っていた。
それを認識しているはずなのに私には何も感じられなかった。世界がモノクロに見えてただ無機質なものだった。昨日まで笑い合っていた仲間でさえ何も感じない。

大切なものは全部失った

「名前!どうして精市を守らなかった?!ボスを、ボスを何故死なせた!!」

弦一郎が私に怒鳴る。

「なんで、あんたが生きててボスが死ななきゃなんないんスか!!結局は我が身が一番なんスか!!!」

赤也が血走った目で私を見る。

「ボスがこうなったことちゃんと説明しんしゃい。ただ見殺したのなら俺じゃって黙っとらんぜよ」

どうして精市が死んだか…?
そんなの決まってる。

「私が、殺した」

真実はそれだけ。
皆に伝えるのはこれだけでいい。
恨まれるのは私だけでいい。

ーーーーーーーーーーーーーー
息が上がってきた。かれこれ私は半日走り続けている。狭い路地に隠れて乱れた息を整える。そしてまた走り出した。

「裏切り者っ…!!!!待ちやがれ!!!」

ブン太がジャッカルと共に私を追いかけて来る。二人はかつての仲間。それはもう2年も前の話だ。つまりそれは精市が死んで2年経ったということだ。
精市は私が殺したと告げた時から私は追われる身になった。こうなることは覚悟の上だ。悲しくもなんともない。

「しっ…つこいなぁ!!」

ただ、辛くはある。長い間仲間をやって来て多少なりとも信頼はあった。向こうからすればそれを壊したのは私だけど、私からすればただの誤解。けれどそれを解く気は更々ない。
それは赦されるのと同じ行為だから。
私は赦されることのない罪を一生抱えて生きていく。
あの夜に精市を撃った時から決めていたこと。

後ろから発砲してくるブン太。それをしっかりとサポートしつつ的確に私を攻撃してくるジャッカル。プラチナペアと名高いだけのことはある。

「いっ…!!!!」

腕に弾が掠めた。傷口から血が滲み出る。
私は動かない腕を庇いながら物陰に隠れてなんとかブン太達を撒く。
病院なんて行けないから服の袖を破って傷口を縛る。
手当てを一通り終えた所で息をついた。空を見上げれば精市が死んだ日と良く似た星空が広がっている。

精市、私間違ってるのかな。
精市ならどうした?
わからない。わからないよ、精市。
貴方がいないと私は駄目なの。
駄目だけど貴方の言葉が私を縛るから私は死ねない。何よりも重い精市の命令だから。

「死にたいよ、会いたいよ…精市」

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ボスの部屋にはいるとそこには数人の側近とボスだけがいた。
側近は誰もが三十路を越えていそうな男ばかりだと言うのに対してボスは私達と年の変わらない容姿の少女だった。少女はにんまりと精市を見て笑った。その笑みが怖くて咄嗟に私は精市を庇う様に前に出た。

「いらっしゃいませ、と言うべきでしょうか?幸村精市さん」
「……どうして俺の名を?」
「あら、こちらの世界で貴方の名を知らぬ者など居りませんわ。ふふふ」

気持ち悪い。少女に抱いた最初の感想。意味深な笑みをみて早々に仕留めなければと思い私は武器を少女に降り下ろした。
しかし、それがいけなかった。

「降り下ろしていいんですの?降り下ろして私(わたくし)を殺せば、私の部下が彼を殺しますわよ?」

はっと後ろを振り替えればぐったりとしている精市に拘束している敵の姿が見えた。
わからなかった。この部屋に入ってから一度たりとも気を緩めたりはしていない。なのに気付かなかった。

「けれどもう手遅れですわ。彼に私の部下が投与させた薬は人格を崩壊させる劇薬。どんなに精神力の強い者でも壊れてしまう毒ですもの」
「貴様っ…!!!!なんの為にこんなことを!!!」

激情する私に少女は淡々と告げた。ビジネスの為だと。怒りが身体中から溢れだすのがわかった。許せない。許さない。こいつだけは絶対に。

「殺すっ!!!」

武器を振り、相手を斬り。それだけをがむしゃらに続けた。斬って斬って斬って。どれだけの血を浴びようとも構わなかった。精市を傷つけたこいつらを殺すこと、それしか私の頭の中にはなかった。それくらいキレて感情的になっていた。

何もかもが終わった後私は精市の元に駆け寄った。

「精市っ」
「名前っ……頼みが、あるん、だ」

苦しそうに息を吐きながら精市は言う。私は精市の意識を繋ぎ留められるのならとその頼みを聞いた。

「俺を、撃って」
「は…?何、言ってるの。こんな時にそんな冗談笑えないよっ!!!」
「冗談、じゃないよ。俺、はさもう後が長く、無いんだ。この間、病院行って言われた。後…1ヶ月、それが…俺の時間」

後1ヶ月なんて知らない。そんなの精市は今まで一度も言わなかった。体調が良くないことには気がついていたし、動き回ることが良くないこともわかってはいた。けど精市の意思を尊重したくて何も言わなかった。

「だから、最後の命令、聞いて。俺は敵の思い通りにはなりたくない。なら、せめて、名前の手で死なせて。辛いこと言ってるのは…わかってる」
「ほんとっ…滅茶苦茶だよ。命令なんて今まで一度だって言わなかったのに!こんな時だけ狡いよ」

遊び以外で精市は私達に命令を出したことはない。そんな精市の最初で最後の命令。従う他ない。私は精市の部下なのだから。

「それ、から。あいつらに寿命のこと、だけは黙っててくれない、か…」
「わかった。わかったよ、精市」
「ふふっ………ありがとう名前。愛してた。それから―」

静かな部屋に一つ発砲音が響いた。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

今まで沢山引いてきたトリガーの中で一番重かった。引き金を引くことにこんなに罪悪感を感じるのはいつぶりだろう。

「私も愛してる」

ーーーーーーーーーーーーーー
鳥の囀りが聞こえて花が手向けられた綺麗な墓。ここには精市が眠ってる。情報屋の乾に無理矢理この場所を聞き出した。

「精市、久しぶり。元気にしてる…っていうのは可笑しいか。私はね、今皆に追いかけれてるよ」

墓の前にしゃがみこんで目の前に精市がいるかの様に話しかける。

「赦されることのないように逃げてるの。あの夜精市を殺したことを赦されないように」

私の目から涙が溢れた。あの夜に枯れてしまったと思っていた涙があっさりと流れた。それが精市の前だからか私の精神が不安定だからかはわからない。

「後悔はしてる。今でも精市の寿命がなくなる医学が発見されていたらとか、もしかして1ヶ月といわず何年もちゃんと生きられたんじゃないかとか。色々考えるよ」

涙を袖で拭って私は立ち上がった。

「それがいいことかって言えば違うかもしれないけど私からしたら精市を忘れないでいられるからいいことかな」

「なに…言ってるかわからないね。……それじゃあ、また来るよ」

墓に背を向けて歩き出した時ふわりと優しい風が吹いた。それが精市の様な気がして泣きそうになった。

"生きて"

もう一度そう精市が言ったように空耳が聞こえて、私は精市は酷いねって小さく返した。

あの夜の秘密



意味不明ですね。
自分でも何書いてるのかわからないです…。

つまり名前は幸村の頼みで幸村を殺したけれどあえてそれを言わずに幸村を殺した罰として仲間に嫌われる道を選んだということです。この小説の大まかなコンセプトが独り善がりなんですが、分かりにくいですかね。
もっと精進します…











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