▼ 8.藤倉くんとこの先も
「じゃあまた明日。あいしてるよ」
「はいはいどうも。じゃな」
初めのうちはこの言葉に動揺していた彼も、漸く慣れてきたのか最近では軽く流してくるようになった。
そして今日も改札へと向かう愛しい背中を見送る。
電車が発車し、ゆっくりと俺と彼を引き離していく。
俺はまだ彼の温もりが残る場所に移動し、目を閉じて余韻に浸る。
そっけない返事を返しながらも電車を降りていく彼の耳は真っ赤だった。
それがまたあまりにも愛おしくて、やはり俺は彼からは逃れられないのだと思い知る。
「…あいしてるよ」
あの大きな瞳を潤ませ、愛らしい笑顔で、「俺も」と返してくれる日は、そう遠くないかもしれない。
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