mitei 無自覚な天然石 | ナノ


▼ 8

「…ここに居るのに、居ないみたいだ」

その言葉を聞いて、痛いと感じた。
自分の事を言われている気がして、その言葉を紡いだひとの顔が見たくて。

それから、彼の瞳を見た。

ただ綺麗だなって思っただけだ。
その時はそれだけで、欲しいとまでは思わなかったのに。

珍しい色じゃなくても、特別形が整っていなくても。

その色をきみが持っているというだけでそれは世界で一番特別な色になって、その瞳がこっちを見てくれるだけで堪らなく心臓が煩くなったり体が熱くなったりする。
この感覚は何だろう。

やがて時を経て、何も無かった荒野に一輪の花が咲いた。

枯れないようにしなければと、今日もせっせと水をやるのだ。

その為にまずは、自分を磨こうと思った。
隠すことをやめて、磨いて磨いて思い切り輝いて、無視出来ない程の光になろうと思った。

そうしたらきっと嫌でもきみは俺を見つけてくれるだろう。
あの時みたいな宝石のような眼差しに俺を映してくれるだろう。

誰かに見つけられる前に見つけないと。
誰かがあの輝きに気付いてしまう前に捕まえてしまわないと。

俺に気付いて。俺だけを見て。興味を持って、手を伸ばして、欲しいと願って。

そうしたら俺もその手を掴むから。

焦がれて止まなかったその手を、きみを。

二度と離さないから。

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