▼ 星が落ちた日、生まれた日。
星が落ちた。
実際にこの目で見た訳じゃない。けれど確かに、あの声をこの耳が聴いた。
落ちる寸前の、星の唄を。
悲哀や歓喜や郷愁や、そんな色がたくさん詰まったとても美しい声だった。
どこに落ちたのかは、知らない。
けれどきっと彼、いや、彼女は寿命だったのだろう。
永い永い、僕らには想像もつかない時間の中で彼らが何を見、聞き、そして感じたのかを知る術は殆ど無い。
殆ど無いが、落ちる瞬間のあの声だけがそれを教えてくれる。
僕が落ちる時、一体どんな唄を奏でられるだろう。
脳裏にそんな考えが過ぎるけれどそもそも僕は星じゃなかった。
永い時間この姿を保っていられる訳でもない。
あぁ、風が気持ち好いな。
夜に吹く風は昼間と違ってどこか柔らかく、どこか冷たい。
澄んだ空気は確かに道となって、あの声を、唄をこの耳まで届けてくれた。
それで十分だ。
星が落ちた。
そうしたらまたどこかで、小さな輝きが生まれ落ちた。
それだけのこと。
たったそれだけの話。
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