mitei Pretender | ナノ


▼ 3

そうして彼と恋人になって一週間。

ちょっとずつ、ほんのちょっとずつだけどS君と仲良くなれてきた気がする。

始めは何を話せばいいのか全然分からなくて気不味く思うことも多かったけれど、その度に彼の方から気を遣って色々話題を振ってくれた。

流石、男女共にモテる彼はコミュ力が高い。
一方的に自分が話すのではなくてちゃんと俺の言う事にも耳を傾けてくれるし、自分が話す時も、俺の反応を見ながら分かりやすく、時に冗談混じりに話してくれる。

気付けば俺も彼と話すのが楽しくなって、一緒に居る時間が苦じゃなくなっていた。恋人っていうよりかはまだ友達って感覚の方が強かったけれど、それでも今まで一人しか友達が居なかった俺には新鮮な事が多かった。

しかしたまに思うことがある。

S君は「お試しでもいいから」と言って告白してくれたけれど、それっていつまでも続けて良い訳ないよな。
彼の気持ちを疑うのは非常に心苦しいが、未だに何で俺なんかに告白してくれたのか全然理解出来なくて、やっぱりゲームか何かの一種なんじゃないかと考えてしまう。

けれどもしS君の気持ちが本当ならばこんな考えは失礼だ。いくらネガティブな性格だからって、己の妄想で相手を傷つけたくはない。

という訳で、少し勇気を振り絞って下校中直接本人に聞いてみた。

「あの、さ」

「ん?どしたの?」

「いや、何で俺なんかに…その、告白してくれたのかなって…思って」

「そりゃあ、好きだからだよ」

ストレートに言われて少しどきりとする。今までの長くはない人生の中でもこんな青春じみたイベント俺には無関係だったし、これからも無関係だと思っていたから余計に変に意識してしまう。

「でもさ、な、何で俺なの?周りにも可愛い女の子いっぱいいるじゃん」

「好きになるのに、理由って必要?」

きょとんとして問い返されてしまって、俺はもう何も言えなくなってしまった。いかにもモテそうな人が言う台詞をこうもあっさりと…。言われた側は結構恥ずかしいんだけど、S君は恥ずかしくないのか?

いやでも、結局疑問は残ったままだ。何で、俺なんだろう。俺なんて彼の隣に立つのに余りにも不釣合いなはずなのに…。今まで碌に話したことも無かったのに、何で…?

「何で…」

「嫌?俺と付き合うの」

「え、」

心の声が出てしまっていたらしい。俯いていた俺の顔を覗き込んでくる彼の眼差しには、まるで迷子のように不安の色が揺れて見えた。それを見ていると何だかこちらも胸が苦しくなってくる。

「そんなに嫌なら…」

「え、あの…べ、別に!嫌とかそういうんじゃあ…」

「そっか。なら良かった」

へラッと安心したように表情を緩ませる俺のコイビト。そんな顔見ちゃうと本当に俺のことが好きなのかなんて…思ってしまう。思って、いいのかな。

こういう経験全くといっていい程無いから分かんないや。

…相談、したいなぁ。

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