「それでね、…澤くん?どうしたのじっとこっち見て。かわい…じゃなくて、どっか体調悪いとか?もしかしてお弁当の卵焼き腐ってたとか?中ちゃんと焼けてるように見えたけど…あ!それとも、」
「違うよどこも悪くねーよ。過保護過ぎか。そうじゃなくて、お前のその喋り方さ…」
「喋り方?」
「何て言うか、ずっとそうなの?語尾が柔らかいっていうか、その…」
「え、もしかしてもっとオラついた感じがタイプ?」
「違うあほか。そうじゃなくてその、無理してるんじゃないか?俺の前で…や、自意識過剰かもしんないけど」
「無理?してないけど…何でまた」
「えー、と。実はたまたま聞いちゃったんだ。東中出身の奴から、お前のその…荒れてた時の話。あの時に比べたら大分柔らかくなって、口調も変わったって。ごめんな、お前にとっては聞かれたくない話だったかも知れないのに」
「謝んないで。ってかあれはあいつらが突然話し出したんだし澤くんは不可抗力でしょ」
「いやまあ、…え、あの時お前居たっけ?」
「ん?あー、まぁちょっとね。それにそいつらの言う通り、あの時に比べたら色々変わったってのは事実だしさ」
「うん…。それでその、お前が言ってたこと思い出したんだ。中学の時のこと知られたら俺が怖がるんじゃないかって。だからもしかしたら今もその…話し方とかまだ気を使ってるんじゃないかって、思っちゃったんだ」
「俺は全然無理してないよ?っていうか澤くんを前にすると自然にこうなるっていうか、うん。何かこっちのがしっくりくるかな」
「そう、なのか?」
「うん。っていうか澤くん。それってまるで、俺の素が見たいみたいな…?」
「え、まぁ…そうなるのかな。やべぇ、傲慢だな俺」
「俺の素は澤くん限定で既に結構見せちゃってるんだけどなぁ…。というか澤くん、前言撤回します。やっぱ俺結構無理してるかも」
「えっ、マジで?やっぱりそうなのか?!」
「…うん。とりあえず今は抱き締めるだけでも」
「いいわけあるか。無理ってそっちかよこの変態」
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