「なぁ藤倉ー。さっきのさぁ、」
「んー?」
「いや、もしかして乗り気じゃなかったのかなって。だとしたら無理に写真撮らせちゃったみたいで、何か悪かったな…とか思ったり」
「何で澤くんが謝るの?どうせ時間あったんだしいいじゃん。それに俺は慣れてるよ、こういうこと」
「あー、だろうな。そっか、うん。ならいいんだ」
「ん。それに澤くんの『はい、チーズ』聞けたし。…あれはちゃんと録れたし」
「とれ…え?何て?ってかあれ普通じゃないの?写真撮る時『チーズ』って言わない?」
「言うよ?あとは普通にいち、にー、さん!とか」
「さん!じゃ口閉まっちゃうじゃん」
「じゃあいち、にー、さん、しーとか?」
『次はー○○駅ー。○○駅ー』
「あー、もう着いちゃったな。早ぇー。じゃあ俺ここで、って藤倉?何この手」
「え、ああいや!ゴメンゴメン、また明日ね」
「んー、よし、一緒に降りるか!」
「え、あっちょ、澤くん?!手!繋いだまんま…」
「ふう。電車、行っちゃったな。次はまた10分後だって。お、良かった。ベンチ空いてる。ほら藤倉、ここ座れよ」
「え、まさか」
「さっきの分、次の電車までは付き合ってやる」
「…っ!うん!」
「その満面の笑みをさっきの写真でも…いや、何でもない」
「ふふっ。何なら次の電車でうちに来てもいいんだよ?」
「お前ん家行ったら何されるか分かんないから却下」
「ひどい…。否定できないけど」
「だろ。今付き合ってやってるだけでも有り難く思えよ」
「うん。ありがとう。…ねぇこの後やっぱり俺の家」
「行かない」
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