「さて問題です」
「悪い。全然分からん」
「まだ出題してないのに。さて気を取り直しまして」
「続けるんだ…」
「問題です。俺はなぜ不機嫌なのでしょうか。ハイ、澤さん」
「えぇと…。お前が何となく怒ってる?ってのは気づいてたんだけど…ゴメン。やっぱ理由は分かんない」
「ヒント。左手」
「あっ、もしかして体育のバスケん時に俺が不注意で突き指したから?いやでもそれで…?」
「それもある。でもあれはまぁ、誰も悪くないから仕方ない。五万歩…いや五億歩譲って」
「めちゃくちゃ譲るな?」
「問題はその後です。ヒントその二、五限終わりの…」
「えっ、えっ?何かあったっけ?俺何かしたっけ」
「ブブーッ!時間切れ。正解は、『澤くんが突き指してるにも関わらず他人の理科準備室への荷物運びを手伝ったこと』でした」
「あ、あー!あの子かぁ。でもそんなに重くなかったし…。ていうか、お前アレ見てたの?」
「重い重くないんじゃないんだよなぁ…。見てたよバッチリと」
「でもそれで不機嫌?なんで…」
「………」
「わっ、真顔やめて、怖い!怖いから」
「全くこのお馬鹿さんは…」
「もしかして心配してくれた?大丈夫だよ、軽症だし指は使わないようにしてた…しっ!?」
「ふうん。例えば俺が全く…いや、骨折した手で同じことしてても同じように思うの?」
「えっ、それは思わな…ていうか手、離し」
「まだまだ道は遠いなぁ…いつになったらもっと大事にしてくれるんだろ…はあぁ」
「そこで溜め息、吐くな、手にかかる…!ていうか今、手のひらに」
「………もっと、俺を、頼って」
「………っ!」
「返事」
「だっ、て…困ってたし、その度にお前呼ぶっていうのも、ひぇっ!今、舐め…?」
「………もっと、おれを、頼れよ」
「ふ…じく、ら…?」
「へんじ」
「…はい。ゴメンナサイ」
「信用ならないけどまぁ、とりあえずよろしい」
「何かちょっと怖かった…」
「よしよし。もう怒ってないよー」
「別にビビってないもん…撫でるな変態」
「怖がらせてごめんね。でももっともっともっと、大事にできるようになろうね」
「…人のこと言えない癖に」
「お互い様だねぇ」
「ごめんな」
「もういいよ。一緒にがんばろう」
「一緒に」
「うん。俺ももっと澤くんが頼れるようになるよ。だからさ、一緒に」
「もう十分、なのになぁ」
「澤くんはそういう点では頼んないよなぁ」
「うっ、ガンバリマス…」
「ふっ、よろしい」
prev / next