「今週の土日は確か運動部の試合は無いし…予定は無かったはず…」
『あのさ、今週、』
「………うーーーん、ちがう。そもそも桃好きかどうか聞いてみて…」
『突然だけど、桃好き?』
「ダメだ、突然すぎる…。澤くん桃好きだっけ…嫌いではなかったはず…」
『突然だけど、桃』
「桃…もも…。あぁー…。あっ!やべぇ間違えた!違う違う、あぁちょっ、」
『もしもし藤倉?どうした?』
「も、もしもし藤倉です…」
『ホントにどしたんだ?大丈夫か』
「だいじょうぶ…。ゴメン、こんな時間に」
『別に全然いいけど、お前から電話なんて珍しくてちょっと焦った。何かあったのかと思ったよ』
「いや本当に、大したことじゃないんだ。ただ普通にメッセージ送ろうとしてて、間違えて通話ボタン押しちゃっただけで…ごめん」
『何で謝んの?ふはっ、お前でもそんなことすんのな』
「や、まぁ、うん」
『…やっぱり何か元気ない?』
「あるある!めっちゃあるよ!?」
『そうか?ならいいけど』
「あのさ、澤くん」
『んー?』
「突然だけど、桃…好き?」
『桃?うん。すげー好きだよ』
「………」
『藤倉?なぁおい、お前本当に大丈夫か?』
「だいじょうぶ、うん。そっか、好きか…よかった」
『で、桃がどうしたんだ?』
「実はさ、その」
『うん』
「………今週末、うちに来ない?」
『えっ、お前ん家?いいの?』
「うん。その…母さんがね」
『…うん』
「お隣さんから桃を、たくさん貰ったらしくて。お裾分けしたいみたいなんだけどその、澤くんが面倒なら全然俺が届けに行くし、何なら宅配便で」
『落ち着け落ち着け、何言ってんだお前』
「そうだよね、ごめん」
『行くに決まってんじゃん。お土産何がいいかな?藤倉の母さんに会えるの久しぶりだなぁ』
「来てくれるの?」
『行っていいならもちろん』
「本当にいいの」
『え、何かあるの…?行っちゃダメ?』
「いいや、すごく嬉しい…」
『別に今までだって何回も行ってるのに、大げさだなぁ』
「そうだね、そうかも。でも何回でも嬉しい」
『俺も。誘ってもらえてすごい嬉しい。藤倉の母さんにもお礼言っといて。お土産何がいいかも聞いといて』
「何もいらないのに」
『いいの。俺が持ってきたいの』
「ホントに律儀なんだから…」
『なぁ』
「うん?」
『いや、ありがとな』
「うん」
『また今度俺からも電話してい?』
「え」
『嫌なら全然、』
「お願いします!」
『声でっかいよ。ふふっ、分かった。じゃあまたな』
「うん」
『………』
「………すげー、すき」
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