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隠さないで、破らないで。
そんなに自分を蔑まないで。
こつり、こつりと足音を響かせ
一歩ずつ彼に近づく。
他のだれでもないきみが書いてくれたというだけで、他のだれでもない僕に書いてくれたというだけで。
この紙には計り知れない価値があるんだ。
捨てないで。
伝える前にあきらめたりしないで。
例え上手に綴れていなくてもそれはこの世にふたつと存在しないから。
ちゃんと見せて。
きみが他のだれでもない、僕のために足掻いた後を。その傷跡を。
その傷を癒せるのも、
広げていいのも僕だけだろう?
近づくと、蹲っていた彼が顔を上げた。
ねえ、すべて僕のものだろう?
end.
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