mitei Colors 1 | ナノ


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「緋色くんって名前カッコ良いよねぇ!」
「ね、私も緋色って呼んでい?」

「んー、気持ちは嬉しいんだけどゴメンね。俺自分の名前あんま好きじゃないんだよね。出来れば名字で呼んで欲しいかな」

「えー。カッコ良いのにぃ」

今日も教室で繰り広げられるきゃっきゃと楽しそうな、他愛も無い会話。
何がそんなに面白いのか、毎日彼らからは笑い声が耐えない。

花のように笑う女の子たちと、そこに運動部の爽やかな男子連中も加わって教室の端にはキラキラと眩しい空間が広がっている。
そしていつもその集団の中心にいるのは、一際背が高くモデルのように整った顔立ちをした僕の幼馴染み、北村緋色。

ふわりと人当たりの良い笑顔を振り撒き、誰にでも優しく親しみやすい性格で人気者の彼は、その存在だけで周囲を明るく照らす。

まるで太陽だ。

皆、太陽のように暖かで優しい彼に近づきたくて仕方が無い。
外見も中身も華やかな彼の周りにはいつも人が絶えない。

学校で見る彼は、僕の知らない人のようだといつも思う。

きらきらとしていてまるで入り込めそうにないその光景を見て僕が抱いた感情の名前は分からない。憧れなのか劣等感なのか、或いは嫉妬なのか。

物心ついた頃からずっと一緒に居たのに、僕と彼はこんなにも違う。
他人に向ける彼の笑顔を見る度に、いつも彼が遠ざかっていくような気がした。

とにかく休憩時間ごとに繰り広げられるその光景は、根暗でコミュニケーションが苦手な僕には縁遠い、とても眩しい光景だ。
眩し過ぎて、あまり見ていたくない。

ホームルームが終わるとサッと鞄を取って教室を出た。気づかれないように元々薄い気配を消して、そっと。
僕が教室を出て行ったことなど、きっと誰も歯牙にもかけないことだろう。

そう思って「今日こそは」と少し急ぎ足で昇降口に向かう。

しかしそんな僕の背中を見逃さない、紅い視線。
太陽が一瞬陰ったようなその昏い眼差しに気づく者はいなかった。

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