何か、すっっっげぇ疲れた…。
そう言えばすっかり忘れてたけど初めてこいつの家にお邪魔した時もセクハラされたっけな。何で忘れてたんだ、俺。
もう誘われたって軽々しくこいつの家には行くまい。そう誓って玄関の扉に手を伸ばすと、後ろから声が掛けられた。
「あ、ちょっと待って澤くん」
「ん?何、何か忘れも、んんっ?!」
…あぁ、まただ。
また俺は、油断した。
彼は振り返った俺の後頭部をがっしり固定し、あろうことか形の良い口で俺の口を塞いで言葉も呼吸も飲み込んでしまったのだ。話していた最中ということもあって今度は最初から無遠慮に舌が差し込まれてくる。やっぱり、熱い。
必死に逃げる俺の舌を捕まえては絡めとり、上の歯の裏も下の歯列も舐められる。
もう片方の手は腰に回され、力が抜けても倒れないようにグッと俺を支えている。
「んっ、んん…ふ、ぁ…」
「ふは、苦しい?…ん、ちゃんと鼻で、息して?」
んなこと、言われても…!
そんなに舐め回しても美味しいはずなんかないのに、藤倉は何度か口を離し角度を変えては俺の咥内を貪り続けた。
俺は為す術なくぎゅうっと藤倉の服を握り締める。シワになったって構うもんか。こいつの自業自得だろ。
酸素が足りないのか段々ぼうっとしてきて、何も考えられなくなってきた。ただ与えられ続ける甘い刺激を受け入れながら、そのうち「もっと欲しい」なんて馬鹿な考えが浮かんできてしまう。
互いの唾液が混ざり合い、口の端から溢れ出す。ごくりと混ざり合った唾液を飲み込んだ藤倉は、少し口を離すと俺の顎に伝うそれをも綺麗に舐めとってしまった。
最後にもう一度ちゅっと可愛らしいリップ音が鳴って、唇が離される。
「…はぁ、は、はぁ…」
「っは、ふふ…本当、学習しないよね澤くん」
「ふじくら、おま、ホント…はぁっ、何がしたいんだよっ」
「うーん…イタズラだよ。ただの、ね」
こんの野郎…。
相変わらず度が過ぎてる!
「明日は現代文、一緒にやろーね」
「一人でやるわっ!」
「あっはは。じゃあまた明日ね澤くん。…あいしてるよ」
「馬鹿じゃねーのっ!じゃあな!」
バタンッと勢いよく扉を閉める。
その瞬間に見えた藤倉の表情はやっぱり、いつも通りだった。
prev / next