mitei サンライズイエロー2 ペトリコール | ナノ


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すやすやと規則的な寝息を立てて眠る柔らかい彼の髪を撫でながら、くすりと笑う。
いくら成長したって本当に寝顔はあの頃のまま、子どものようなあどけなさが消えない。僕らの枕元では灰色の猫がこれまた気持ち良さそうに寝ていて、たまに唸るような寝言が聞こえてくる。

日に日に、陽多はあの日の記憶を取り戻し始めているようだ。少しでも記憶が残っているなんて通常ならばあり得ないことなのだが、それはただ奥深くに眠っていただけで、陽多は僕のことを忘れてなどいなかった。
一欠片でも覚えていてくれたことが堪らなく嬉しかった。

何もかもを忘れられている覚悟で来たのに、やっぱりこの子には驚かされることばっかりだ。
僕と出会って、共に過ごして、実際に話して新しい一面もたくさん知った。
自分のことも、彼のことも。まだまだ分からないことだらけで、きっとずっと飽きることはないのだろうと思う。

僕の存在する理由。

喜びも悲しみも希望も絶望も、暖かさも冷たさも期待も退屈も全て彼から生まれる。

彼自身は彼のものでそのすべては彼のためにあるけれど、僕自身は僕のもののようで僕のものじゃなくて、彼のためにありたいといつも思う。だってあの日「僕」を生んだのは彼なのだから。

それがとても傲慢な事だとは一応自覚しているけれど、あの日願った彼の「幸せ」こそが僕にとってのすべてだから。

まだまだニンゲンのことは分からない。
僕のこの感情を、一言で表せる言葉は果たしてあるのだろうか。

「愛してる、かなぁ」

それが一番近いような気がするけれどそれだけじゃ足りない気がする。
もっと適切な表現があるのかも知れない。
起きたら彼に聞いてみようか。「重過ぎる」って真っ赤な顔ではぐらかされそうだから、やっぱり止めておこうかな。

とりあえず今は一番近いこの言葉しか言えないや。

「ひなた。あいしてる、よ」

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