▼ 13
子供たちが走ってくる俺に気づいたらしい。顔だけをこちらに向けて、小さな手を必死に伸ばしてくる。
ゴロゴロと遠くで聞こえてくる轟音。嫌な予感は的中したが、幸いまだ遠い。
二つの小さな手をぎゅっと掴んで引き寄せ、そのまま走り出した。子供たちは大人しく俺について来てくれている。小さな足で一生懸命走る子供たちが風に飛ばされないように、より強く手を繋いだ。
早く、早くこの場から離れなければ。
ゴロゴロという轟音は段々こちらに近づいてくるようだった。
「きゃぁっ!」
バシャッと音を立て、後ろを付いてきていた女の子が転んだ。カッパを来ているとはいえ泥々だ。慌ててその子の方に戻ると、ピリッと何か鋭い予感が背中を走った。
…来る!
咄嗟にそう思って、どんっと女の子をその場から押し退けた。
その光景を少し前で見ていたもう一人の男の子に女の子を預け、「走れっ!!」と命令した。
多分人生で出した中で一番大きな声だったと思う。俺の声に驚いたらしい男の子はそれでもぐっと女の子の手を握って、俺の言う通りに走り出した。
そうだ、それでいい。
そうしてパッと見上げると、ゴロゴロと鳴り響く空から落ちてくる一筋の光が、見えた。
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