mitei サンライズイエロー | ナノ


▼ 12

その日も、大雨だった。

朝はそれほど降っていなかったのに徐々に雨足は強くなり、昼頃には一瞬にして視界が真っ白になるほどの土砂降りになった。

朝からの天気予報では雨は降るとは言われていたものの、ここまでになるとは予報していなかった。もしかしたら局所的な雨なのかもしれない。雨の音で授業どころではなくなり、教室中が帰れるのかという心配でざわざわと騒がしい。

遂には町に警報が発令されて放送が鳴り響き、授業も早く切り上げられ、生徒のみならず職員にも全員帰宅命令がかかった。

「これ以上雨がひどくなる前に」とのことだったが、もう結構十分ひどい。この分じゃあ傘を差したってあまり意味は無いだろう。

家から迎えに来てくれる人がいる者はどんどん車で帰宅していく。

学校に残る人も僅かになり、生徒は俺くらいになった。がしかし、あいつが見当たらない。車で帰ろうとしていた先生が家まで送っていってやる、と言ってくれたが断って、学校中探した。だけどどこにもあの姿は無かった。

…先に、帰ったのかな。

思えば今日は朝から姿を見ていない。昨日は俺の家にも泊まりに来なかったし、教室にも来なかった。
そもそも体調不良とかで学校には来ていなかったのかも知れない。それならそれで一言言って欲しいものだが…。

これ以上探しても見つかりそうにないし、待てば待つほど雨は強くなっていくようだった。

しょうがない。学校に泊まる訳にもいかないし、この雨の中、帰るか。



一応傘を差して歩くが案の定あまり意味は無かった。雨が視界を遮り、数メートル先も見えない。

ざあざあと地面を叩きつける轟音が耳元で響いて、強すぎる風は立っていることすら邪魔してくるようだ。

傘なんて、あってもなくても同じようなものだった。寧ろ一度ひっくり返った傘は鋭利な武器にすらなりかねないから、この場合は無い方がマシかもしれない。

それでも自身の方向感覚を頼りに歩く。俺が歩かなきゃ、家まで辿り着けないからだ。

…何か、ずっとそんな風に生きてきた気がするなぁ。

ばあちゃんは「一人で抱え込み過ぎるな」って俺によく言ってた。何かあったら直ぐに相談しろって。俺も、そのつもりだった。けれどばあちゃんはもうすでに俺の分の荷物までいっぱい背負っていたのを知っていたから、それ以上頼る気にはなれなかった。頼りないと思っていた訳じゃない。ただそれ以上、負担になりたくなかったんだ。

気づくと俺は、あらゆることを自分で解決しようとする癖が付いていた。

そんなことをぼんやり思いながら歩き続けていると、ふいに風が弱くなる瞬間があった。そして一瞬風と共に開けた光景に、俺は目を疑った。大きな木の下で、小さな子供たちが雨宿りしている。あれは、小学生だろうか。黄色いカッパは風でバタバタと揺れ、小さな身体では立っていることすら難しいらしく二人して必死で木にしがみついていた。

駄目だっ…!!あんなところで雨宿りなんかしてたら!!

雨風だけならともかく、もし雷が落ちようものならひとたまりもない。何とかしてあの子達を木から遠ざけなければ。

「走れっ!!ここから離れるんだ、早く!!」

気づけば傘を放り出して、俺は走り出していた。

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