mitei サンライズイエロー | ナノ


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「最近雨ばっかじゃない?」

「しょうがねぇだろ。そういう季節なんだから」

「いやーそれにしてもいつもより長いって絶対!それに昼休みくらい晴れてくれても良くね?サッカーできないじゃん。その後の体育は降っててくれてもいいから」

「昼休みだけ止む雨ってなんだよ。遊んでないで今の内に数学の課題しとけってことじゃねぇの」

「陽多くん現実主義ー。言葉の使い方あってんのかなコレ」

昼食後。憂鬱そうに机に突っ伏して校庭を眺める友人と談笑しながら、俺は雨の止まない外の景色を眺めていた。たくさん水を含んだ校庭の土はいつもより色が濃く、雨が叩きつける度に泥を辺りに撒き散らしている。これじゃあ今雨が止んでもサッカーは無理そうだな。

いつも柊凛と一緒に昼休みを過ごしていた屋上もこの雨では流石に使えない。こういう日は大体空いている教室を探したり階段の踊り場に座ったりして二人で昼ご飯を食べていたのだが、今日はクラスで用事があるらしくお互いの教室で別々に食べることになった。

たまには、その方が良いだろう。俺のせいで柊凛が他の生徒と交流できないのは困るし、彼と友達になりたい生徒は山ほどいるだろうから。まあ今朝別れた時は何か物凄く嫌そうな顔をしていた気はするが。

たった数ヶ月だが、最初に比べて柊凛は感情をよく見せてくれるようになった。
よく笑うし冗談も言うのは前からだが、俺はそういった彼のプラスの感情以外にマイナスの感情も最近ではよく感じ取れるようになったのだ。
とは言え彼が本気で怒ったり苛立ったりしているところはまだ見たことが無いので、マイナスといってもほんの些細なことではあるのだが。

彼は負の感情では表情を崩すことがあまり無い。ただ彼の纏うわずかな雰囲気の変化から何となく「嫌なのかな」とか「面倒くさがってるな」とかそういうのが伝わるようになった、とでも言うのかな。分かりやすく言うと俺の柊凛センサーの感度が上がった、みたいな。柊凛センサーってなんだよって感じだが突っ込みは受け付けない。
いつ頃からかは分からないが、特に彼が頻繁に俺の家に泊まりに来るようになってからそういうのが分かりやすくなってきた気がするんだよなぁ。

…少しずつ、俺に心を開いてくれているのだろうか。

柊凛は俺に優しい。決して心を許されていないと思っている訳ではない。彼のその優しさが建前でも偽物でもなく、純粋に俺に向けられたものであることは痛いほどよく分かっているつもりだ。

そう、彼は優しい。それ故に、深く入り込めない。

彼が時折見せる寂しそうな瞳の理由を、俺は未だに考え続けていた。
俺の目を見つめる時、遠くを見ている時、カイを撫でている時。彼はやっぱりほんの少し寂しさを滲ませる。あの真っ黒い瞳は、一体何を見ているんだろう。

一人暮らしのことだってそうだ。柊凛は俺が心配すると思って何も言わなかったのだという。それは俺が一人の寂しさを知っているから、きっと柊凛にも同じ寂しさを重ねると思ったのだろうか。
何にせよもっと話して欲しい。彼自身のことを、彼の口で。

もっと、知りたいのになぁ。
知って何が出来るんだってこともあるかもしれないけれど、やっぱり知らなきゃどうしようもない。だけど役に立ちたいなんてのは言い訳で、本当はただ単純に彼のことを知りたい。知って、もっと…彼に近づきたいんだ。

「…やっぱわがままなのかなぁ、俺」

「なになにひなちゃん!?わがままなの?」

「えっ!口に出てた!?恥っず…。てかちゃん付けやめろ」

「俺も今初めてひなちゃん呼びしたけど何かすっげ気に入ったわ。しっくり来た!」

「来てたまるか」

「ってか悩み事あるならお兄さんに言ってごらん?カフェオレまでならおごってやるよひなちゃん」

「ありがたいけどいらんわ」

悩み…。悩み事って言えるのかなこれは。
俺はあいつを知って、一体どうしたいんだろう。

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