mitei カフェ店員パロ | ナノ


▼ 6.side-S

起きたら知らないベッドの上でした。おぉ。

服は昨日のまま、二日酔いもしてないしまだ仕事まで時間はある。
どこからかコトコトカチャカチャ何かを作るような音が聞こえて、俺はベッドから降りてドアを開けた。

あ、昨日あいつを寝かせたソファー。掛けた毛布はいつの間に俺に掛け直されてたんだろう。
キッチンを見ると、寝起きにしてはきっちりした藤倉の姿があった。俺に気づいて、ぱっとあの笑顔を咲かせる。

「おはよう。気分悪くない?」

「あぁ、うん。それよりお前の方が」

「おれはもう全然平気!澤くんのおかげだよ、ありがとう」

「いや、全然…」

朝なのにまっぶし…。きらきらは変わらないというか、日に日に増してないか?白いティーシャツにスウェットを履いた彼はそんなラフな格好でも最高に眩しかった。
その後旅館みたいなきちんとした朝食を用意され、丁寧にもてなされた。朝飯は和食派な俺にとっては嬉しいが、こいつもそうなのかな。それにしても本当に昨日の酔いはどこへやら。きらきらがすごい。

「昨日、泊まってくれたんだね」

「あ、ゴメン。ベッドも取っちゃって」

「ううん。居てくれて嬉しい。いつもこんな風に澤くんがいたら、めちゃくちゃ嬉しいだろうなぁ」

「そんなに…?」

「うん。一緒に住もうか」

「あぁ。え?………え?」

冗談だよな?と思いじっと藤倉を見つめるも、にこにこと笑顔は崩されないまま。真意が分からない。
確かに昨日、めっちゃ意気投合したけどさ。まるで初めて飲みに行ったとは思えないくらい盛り上がったけどさ。

ルームシェアとかする仲ではなくない?
距離感がちょっと未知数だな…。嫌とかでは、不思議と感じないんだけど。

「いいよ、今はまだ。でも考えといてよ」

「なんで俺?」

「澤くんだから」

「いや、だからなんで」

「そうだな…。一緒に居たいって、思えたからかな」

あ、睫毛。
手を伸ばすと、白い頬に指が触れた。睫毛取れた。取れたけど。

「ごめん、睫毛付いてて」

「いや…」

「あ、嫌だった?」

「むしろ…」

「ん?」

「絶対、一緒に住もう」

「んん?」

「とりあえずまた今週末、うちにおいでよ。ゲームしよ」

「え、あ、おう」

何か今までになく決意に満ちた瞳だったな…。何がそんなに気に入られたのかまるで分からない。でも俺も、藤倉と居るのは嫌じゃなかったし、むしろ…。
その後何度か彼の家に遊びに行き、泊まるのも気兼ねなくなって、彼も俺の家に来たりして。

藤倉が言ったようにルームシェアする仲になるのはそう時間が掛からなかった。ルームシェアって呼んでいいのか。
それから、何度か一緒に飲むようになって気づいたことがひとつ。藤倉は酒が強いらしい。

ならどうしてあの晩だけあんなに酔ったんだって訊いたら「緊張してたからかな」という答えが返ってきた。なるほどなぁ。

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