mitei カフネ | ナノ


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メッセージアプリのブロックはしたが電話番号まで知られてたのは忘れてたんだなぁ。
その日の夜、スマホでリズムゲームに勤しんでいると珍しく電話が電話としての機能を発揮した。誰かから電話が掛かってきたのだ。

まぁ色んな機能を備えてスマートになっても基本は電話だしな、と思いつつもゲームとしても活用したいところ。俺はあと少しでフルコンボを叩き出せそうだったので申し訳ないとはちょびっと感じつつ、無視するつもりだった。なのに、電話のコールは鳴り止まない。そんな自己主張強めな画面に間違えて俺の指は遂に応答ボタンをタップしてしまった…。
くそう、あと少しだったのに…。めっちゃ難しいところをようやっとクリアしたとこだったのに…。

若干悔しがりながらも仕方なく電話を手に取った俺は通話の相手を確認せずにそれを耳に当てた。スピーカー通話とか、人と電話すること自体ほぼないから使い方分かんない。その存在すらも覚えているか怪しいところ。
そうして俺から通話相手に文句を言う暇もなく、逆に向こうから文句を言われる羽目になるとはまさか思わなかったよ。

「もしもし?」

『もしもーし。ひどくない?秒でブロックされててちょっとヘコんだんですけど』

「あ、うちテレビないんで、そういう勧誘は間に合ってまーす。では」

『あらぁ一言も噛み合わせる気ないね。そっち突撃するよ?』

「来るな」

『やっと会話してくれたな』

「いやぁホント元気そうで良かったよ。では」

『適当に会話中断したらマジでそちら伺いますよ』

「………ご用件は」

『あっはは。ない』

「では」

『五階でよかった?お土産何がい?』

「チィッ!!」

『舌打ちとかすんだね。意外ー』

「………暇人め」

聞いたことのある声、口調、そんで一回耳から離して確認した見覚えのある名前。
相手は昼間のあの自称ヨットさんだ。いやそうとは言ってないか。何て呼べばいいんだ。
というか呼ぶ必要あるのか。

まさか、当日に電話掛かってくるとは思わんかったな…。

「邪魔しおって…」

『え、お取り込み中ですか』

「別に!こっちの話ですぅ」

『…誰か、いんの』

「は?一人だけど」

『あーね、一人暮らし?』

「個人情報なので」

『そっかぁ。今度遊び行くね』

「来るな」

『まぁホント元気そうで良かったよ。ブロック解除してね腹立つから。では』

「はあ?腹立ったのはこっち、オイ!!」

勝手に言いたいことだけ言って切りやがった…。自分勝手な…と呟くももう奴に届くことはなく、電話としての機能は凡そ一分程で終わってしまった。

マジで夕立みたいな奴だな。勝手に連絡先交換しておいて、ブロック解除しろだとか。
俺にそんなに興味もないくせに。

「バァカ!」

ボスッとベッドに投げた四角い便利な箱はもうさっきみたいに震えることはなく、けれど何となくそうっと手に取ってメッセージアプリを開いた。

またゲーム中にあんな電話が掛かってきたらたまったもんじゃないからな。

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