後日譚。
「ちょっと、何でまだ帰ってないんだよ。そこ俺のベッド」
「えぇ?オレ今スウェットの精なんだよ?一緒に寝るのが道理でしょうよ」
「そんな道理あってたまるか」
「ほうらおいで。抱き枕だと思って」
「要らんわ」
断ったのに、結局お布団に引っ張り込まれた…。温かいけど、これからの季節はちょっとな。どうなんだろうな。
大体シングルに俺ら二人は狭すぎるんじゃなかろうか。狭いよ実際。端っこからはみ出てるもん、さくらの足がさ。
俺は背中から抱き締められる形で、ろくに寝返りも打てないしなぁ。そんなことを言うと、さくらは笑って言い放った。
「じゃあ一緒住む?」
「何でそうなるん?」
「二人なら家賃半分こしてもうちょっと広い部屋住めるし、その分ベッドも大きくできるっしょ。ほら、同棲…ルームシェアだよ」
「はっきり同棲って聞こえた」
「同棲しよ」
「開き直んな」
その後、髪色は暫くずっとグレーだったさくらが、俺の部屋着が灰色のスウェットから白のシャツに変わった途端また白く変えたのにはちょっと結構割と引いたけど。
コイツの同棲計画に俺もいずれは首を縦に振りそうなことは薄々分かっていた。
俺の色。コイツの色。
どうだっていいけど、多分一色じゃないから、そんなんじゃ収まんないから、きっと飽きはしないだろう。
コイツも飽きなきゃいいなと思ったのは、今のところ俺だけの秘密である。
まぁ多分バレてるだろうけどね。
「ところで何で俺がピンク好きかもって思ったん」
「だって、桜見てたから。あのベンチで。その光景が綺麗だなってオレも見てた」
「いつから…?」
「さあね」
「もしかして、それであの髪色?」
「うん。美容院に桜の花びら持ってって、これと同じ色にしてくださいって言った」
「マジか…。じゃあそん次は海苔持ってったわけ」
「十色はオレを何だと思ってるのか」
「やりそうだから」
「まぁ、やれって言われたらやるけど」
「やんなよ。店の人困らせるなよ」
「今度は何の精になろうかな…十色のパンツとか」
「それやったら絶対絶対絶対一緒に住まないからな」
「ゴメンナサイ」
今度は何の精になるんかな。
すごくどうでもいい。だってどうせ何の精になっても人間のまんまでも、ずっと隣に居るんだろうから。
「何笑ってやがる、さくら」
「いや別に。覚えといてよかったっしょ、十色」
「さぁ。何のことやら」
prev / next