「あれ、ドア開いたの?外じゃん」
藤倉がそっと頭の拘束を外し俺が目を開くと、先程まで閉ざされていた扉が開いていた。今度は似たような部屋ではなく正真正銘外に続いているらしい。道路らしきものが見える。ついさっきまで目を閉じていたから、太陽の光が眩しい。
「みたいだねー」
「本当に目と耳塞いどくだけで良かったの?」
「うん。変なとこだったよね、ホント」
「でさぁ藤倉、ちょっと聞きたいんだけど、」
「なぁにー?」
「手、また繋ぐ必要ある?」
俺が眩しい視界にも慣れ、漸く見られた外の世界に踏み出そうとドアに向かっていると横からすっと手が握られた。しかも四つ目の部屋までずっとしていた握り方で。
余りにも自然に繋いできたものだから吃驚する暇もなくそのまま見逃しそうになるところだった。
「あー、何かね、帰るまで繋いどかなきゃ駄目みたいだよ」
「え、そうなの?マジか」
「ってことで、帰ろ?」
繋いでいる手を嬉しそうに目の前にかざしてゆらゆらと振り、藤倉が促した。
太陽は少し西に傾き、ややオレンジがかった光が彼の猫っ毛を照らす。
…やっと眩しさに目が慣れてきたと思ったのになぁ。
あれ、でももうドア出ちゃったんなら、手繋いでおかなくても別にいいんじゃないだろうか。
俺がそう言いかけて隣を見ると、いつも通りのヘラヘラと嬉しそうな彼の顔。
…まあいっか。このままで。
俺じゃない体温が触れているところはやっぱり熱いままだが、それが何だか心地よくて少しだけぎゅっと力を込める。
すると斜め上で彼が笑った、気がした。
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