mitei ○○しないと出られない部屋 | ナノ


▼ 2.「恋人繋ぎしないと出られない部屋」

一つ目の部屋を出られたと思ったら、今度もまた似たような部屋に出てきた。あるのはやはり自動ドアらしきものと、電光掲示板のみ。俺たちが入ってきたドアは既に閉ざされていて向かいの壁に新たなドアが待ち構えていた。

ここでもやはり掲示板の指示に従って進むしかなさそうだな。

「また同じ部屋か…」

「ここってトイレとか無いんだね。すごく悪意を感じるなぁ」

「何?トイレ行きたいのか藤倉」

「いや、今はまだ耐えてるんだけど…この調子じゃ後で必要になりそうだなって」

「ええ、トイレ我慢してんのかよ。じゃ尚更早く出なきゃな」

「いや、尿意では、ない…」

「…?」

肩車してからちょっと藤倉の元気が無い。やっぱり無理させちゃったのかなぁ…。
あれから何回か長い溜め息を吐いては「やらかかった…うぁぁあ…」とか呟いてるし、顔を手で覆ってあんま俺と目合わせてくんないし、只でさえおかしい藤倉が更におかしくなっている気がする。
いや、こいつの場合こっちが通常運転か。なら大丈夫だな。

俺たちの会話が終わるのを待っていたかのように丁度良いタイミングでピピッと電子音が鳴り、掲示板に新たな文字が表示された。

「え、と…『恋人繋ぎしないと出られない部屋』?恋人繋ぎ、って何だっけ」

「恋人繋ぎ…さっきのがハードル高かった…いや、でもこれはこれで…」

「藤倉?大丈夫か?なあ恋人繋ぎって、」

「こう、だよ」

隣に並んでいた藤倉がゆっくり俺の右手を取り、二人の目の前に翳す。指の間にするりと長い指が入り込んできて、ぎゅっと優しい力が込められた。

「ほぉ、これが…」

恋人繋ぎってやつか…。普通に手を繋ぐより密着度が高いな。でも何で恋人繋ぎ?
不審に思って再び電光掲示板を見るが、先程から変化は無い。
というか、もう手は繋いでいるはずなのに、ドアが開かない。

「澤くんも握り返して?」

「え、」

彼はそう言うと先程より少しだけ強く力を込めた。それに応えるように、俺も少しだけ握り返す。そうすると指の間により深く俺のじゃない綺麗な指が入り込んできて、触れ合ったところから少しずつ汗が滲む。
何かこっ恥ずかしいな、これ…。

ピピッと本日何回目かの電子音が響き、ドアが開いた。これは、さっきよりちょっと簡単だったかも。

「じゃ、行こうか」

「あの、手は…」

「離したらドア閉まっちゃうかもよ」

「そっか。そうだな」

そうして手をぎゅっと繋いだまま、二人で再び開いたドアを潜り抜けた。

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