mitei ○○しないと出られない部屋 | ナノ


▼ 1.「肩車しないと出られない部屋」

あらすじ

何か変な部屋に藤倉と閉じ込められた。





「『○○しないと出られない部屋』…?何だコレ?」

部屋の中には特に何もなく、一面真っ白な壁にはSF映画で見るような自動ドアらしきものとその上にシンプルな電光掲示板があるのみだ。

ドアみたいなところを押したり引いたりボタンを探したりしてみるが、開かないどころかびくともしない。どうやら掲示板の指示に従うしか出る方法はないらしい。

「なぁ、これってさぁ、って藤倉?」

隣を見るといつもヘラヘラしてる藤倉が何やら凄く焦ったような顔をしていた。「どうしよう」と顔に書いてあるのがはっきり見てとれる。
普段は頼り甲斐がありそうなこいつだが、意外にもこういう予期せぬ事態には焦るタイプなのだろうか。

「おい大丈夫か?気分悪いの?」

「え、いや大丈夫、大丈夫…なのか…?いや俺は全然その、寧ろウェルカムなんだけど、」

「…藤倉?」

「いや、でもこんな形では望んでないっていうか余計なお世話っていうか、ちょっと待って心の準備が…」

「なあ、何の話してんの?」

藤倉はいつも挙動不審だが今日のこいつはいつもとはまた違う感じにおかしい。気分が悪いっていうよりかは落ち着きがなくどこかそわそわしているようだし、心なしか顔が赤い気がする。…本命のバレンタインチョコを渡す前の女子みたいだ。
訝しげな俺の視線に気づくと、「な、何でもないよ」と顔を逸らされてしまった。

そうこうしてるうちにピピッと軽い音が鳴り、掲示板に何やら文字が表示される。

「…肩車しないと出られない部屋?」

「かたぐるま…」

これは…どっちかがどっちかを肩車すればいいってことかな?え、そんだけでいいの?
身長は藤倉のが高いから俺が上の方がいいのかな。逆でも全然いけるとは思うけど。

「肩車だって。どうする?どっちが持ち上げる?俺どっちでもいいけど身長的に俺が上の方が安定するとは思う」

「え、いやいや…え?」

「あー、嫌なら全然俺が持ち上げるけど」

「澤くんが俺を?!駄目駄目!そんなことさせられない」

「えぇ…お前って重いの?見た目そんなこと無さそうだけどなぁ」

「ちゃんと覚えてないけど70キロはあると思うよ」

「へー。まあ背高いしそんなもんか。ちなみに俺は、」

「身長168.4センチ、体重61キロ、体脂肪率15パーセント前後で健康的ではあるけどちょっと痩せ型なところが心配だよね」

「え、お、おう…え?」

何で俺の知らない俺の情報まで当たり前のように知ってんだこいつ…。ぶっちゃけちょっと引いた。
自分のはちゃんと覚えてないって言ったくせに。というか俺、体脂肪率なんて測ったことあったっけ…。

「というわけで、俺が持ち上げるから澤くんが上ね」

「じゃあそれでいいけど、何でちょっと楽しそうなの」

「だってこんな機会中々無いから」

「肩車する機会?したいか?」

「したいよ。肩車じゃなくてもいいけどね」

「くっつけるならなんでも」と何とも爽やかな笑顔で告げられた俺は正直どう反応していいのか分からなかった。やっぱボディタッチとか好きなのかなこいつ。よく分かんないけどまあこんなんでドアが開くならいいか。

「えーと、どうしよ。このまま立ってればいい?」

「うん。出来たら澤くん、もうちょっと足、開いて?」

「こうか?」

「もうちょっと…。ん、いいよ」

俺が仁王立ちになり、藤倉がしゃがみこんで俺の足の間に身体を挟んだ。大きな手が添えるように優しく俺の膝を掴む。
気のせいかもしれないけど藤倉がいつもより特段低い声で指示するもんだから、ちょっと胸の辺りがむずむずしてやり辛い。

「このままでいけそう?」

「うん。怖かったら言ってね」

「体幹には自信あるから大丈夫だと思うけど」

「…じゃあ、いくよ」

「おう」

ふうーっと深く息を吐いて、藤倉がゆっくりと立ち上がった。持ち上げられた瞬間ぐらっと変な感覚になったが、俺が後ろに落ちないようにか藤倉が若干前屈みに立ち上がってくれているから落ちる心配は無さそうだ。

「うぉっ!た、高ぇー…」

肩車なんてされたの何年振りだろう。運動会の騎馬戦とかでは基本的に上に乗る役だったけど、あれは数人で支えるしもっと安定感がある。それに、こんな高さでは無かった気がする。怖くはないけど、視界がまるで違って見えて凄く新鮮だ。
またこの謎の部屋の天井は意外と高いらしく、肩車されたこの状態から手を伸ばしてもギリギリ届くか届かないかくらいだったので頭をぶつける心配も無さそうだった。

それにしても…。身体を支えるために藤倉の頭を掴んでいるのだがやはり猫のような髪がふわふわとしていて気持ちいい。ずっと触っていたくなるなぁ。

ピピッ。

手元の柔らかい感触に浸っていると、軽い音がして扉が開いた。
やっぱり自動ドアだったんだ、あれ。

「藤倉!ドア開いたっぽいぞ」

頭を軽くパシパシと叩いて呼び掛けるも反応が無い。時折思考停止するんだよなぁこいつ…。起動スイッチはどこなんだ。

「…おーい?大丈夫か?もう下ろしてくれていいよ?」

「…やだ」

「…は」

「ずっとこうしていたい…」

「いやしんどいだろ。やっぱ変わってるわお前」

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