mitei あてにならない | ナノ


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「ね、今日楽しかったね、シキ」

「まぁ色々あったけどねぇ。我が恋人さんの意外な一面も知れたし」

「うっ、その節は本当に…」

「一週間、飯」

「うぐぅ…」

「あはは!格好良かったよ」

そう言ってくしゃくしゃと頭を撫でられるが、俺は色々と恥ずかしくて顔を上げられない。本当に、自分の子どもっぽさが嫌んなっちゃうな。シキには偉そうなことを言ったけど、俺はもっと大人になりたい。

そうだ。
シキはいつも色んな人に囲まれて大変そうだけど、でも、それだけじゃなかったことも思い出した。

「ねぇ」

「んー?」

「クレープ屋さんとか服屋さんとか、いい人たちもいっぱいいたね」

「まぁ、確かに」

「おまけくれたお菓子屋さんとか、何でか俺たちのツーショ写真撮ってくれたカップルの人とか、賑やかでおもしろかった」

そう、本当に色んな人がいたな。みんなすごく親切だったし。
シキは道に迷っている人にもよく声を掛けられるから、親しみやすいのかもしれない。

「そうだな。でも今度はもっと静かなところがいいかも」

「うん。あ、でも…遊園地とかも行きたいな」

「ふふっ。まぁ、お前がいればどこでもいいよ」

「ひぇ…」

その笑顔でそんなすごいこと言わないでください…。耳まで赤くなっていると、そこをすりっと撫でられて更に赤くなった。やっぱり性格は意地悪だ…。

日が傾いて、そろそろ寮に帰る時間になった。名残惜しいけどデートはとても楽しかったし、シキの言う通りちょっと色々あったけどそれでも一緒に出掛けられて良かった。

「なぁショウゴ」

「うん?」

「おれ、嬉しかったよ。お前が怒ってくれて。そりゃハラハラしたし心配したしちょっと怖かったけど。でも、嬉しかったよ」

「シキ…」

「正直心配すぎてもう勘弁だけど。でも…ありがとう」

「それは…俺が勝手に」

「ありがとう」

「どう、いたしまして…」

そんな風に真剣にじっと見つめられると一瞬時が止まったみたいになる。何もかもを見透かされてるような不思議な視線に、何も嘘は吐けなくなって、言い訳も何もできなくなりそう。わざとなのか無意識なのか、シキがたまにするその視線が俺は結構好きだ。ということも、今は言わないでおこう。

…あれ、そう言えば。何か忘れてる気がするな。

そうして寮に帰ってからシャンプーとか生活用品を買いに行ったんだと気づいた俺は焦ったけれど、どういう訳か玄関の外に段ボール箱が置いてあった。そしてその中に今日買ってくるはずだった生活用品が全部入っていて驚いた。いつの間にやら、シキがネットで注文してくれていたらしい。なら本当に今日のデートの口実だったってことか…。

そしてそのさらに数日後、別の段ボール箱がいくつか届いて、その中にめちゃくちゃ見たことも着たこともある服が何着も入っていて、シキ主催の二人だけのファッションショーが半ば無理やり開催されたのはまた別のお話。
本当抜かりないな、我が恋人さんめ。

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