▼ 39.side-シキ
side.シキ
『君、シキ…こと………かい?』
『あ………。はい、好き、です』
「………」
『ショ……くん、………あの子といて、……感じること…ない……?』
『……、…』
『そんなこと…!』
『俺、は………』
「………はぁ」
自分のことが、か。
クソ親父、と口の中だけで呟いた。
これだからあの二人を自分のいないところで会わせるのは嫌だったのだと、また溜め息だけが部屋に流れていく。
『おれ…俺、役に立ってますか…?』
「………ばか」
ばか。おれもきみも、にたものどうし。
お互い相手のことは言えなくて、同じようなことを思ってはまた安心を与え合って。
「………ほんと、ばか」
いくら「大好き」を伝えれば、なんて答えはもうきみが出していた。
足りてもずっと、か。おれもそうしよ。
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