mitei あてにならない | ナノ


▼ 25

うわぁ…。
それは、シキと理事長室へ行った翌朝のこと。

朝起きて、ピコピコ光るスマホを確認すると海外赴任中の兄からのメッセージが来ていた。
長い。およそメッセージアプリで送る文字の分量じゃない。
寝起きの頭で思ったのは、「お前ぽやぽやしてる」言い過ぎじゃない?ぽやぽやって何なん。
ぼんやりの親戚さんか?何かちょっと馬鹿にされてるのは分かった。あと多分心配してくれてることも。

寝起きなせいだからか半分以上何言ってんのか分からん。とりあえずあとでゆっくり読もうと思って、お気に入りのスタンプで「ありがとう」と返しておく。
兄には猫なんだか犬なんだか分からないキャラだな、なんて言われたけど俺は結構気に入ってるんだ。

さて、そろそろベッドから起き上がって、着替えて、シキの作ってくれた朝ご飯を…。

………あぁ。
忘れてた訳じゃないけど、俺ちゃんとシキと顔合わせられるかな。
今朝もいつも通り起こしに来てはくれたけどすぐ出ていっちゃったし…。

…………あとで兄ちゃんに相談してみようかな。
馬鹿にされるかもだけど。時差あるし、向こうは仕事もあるから電話…は難しいかもだけど。

「ショウゴー?飯冷めるよー?大丈夫か?」

「あ、うん!い、今行く!」

とりあえず俺は、俺の気持ちをちゃんと知りたい。知らなくちゃ。
あやふやなまま彼と、シキと向き合い続けるのはやだ。
そう決意も固く着替えを済ませ、彼の待つ食卓へ向かう。

襟の裏、という言葉が脳裏を過ったがすぐに何のことだったか忘れてしまって、俺はシキと目を合わせられないまま味の分からない朝ご飯を食べた。

…いつもなら、美味しいって笑い合えるのにな。今顔を上げると何かが溢れ出してしまいそうな気がして、温かい味噌汁を啜る。

真正面では、何事もないかのようにルームメイトがだし巻きを頬張っていた。

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