mitei あてにならない | ナノ


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私立、男子校、全寮制。

よく聞く言葉ではあるけれど、ここは別に「王道学園」てやつではないと思う。

家の都合でこの秋から転入することになった俺は色々な手続きやら案内を経て、自分のだと言われた寮の部屋の前に突っ立ちながらそんなことをぼんやり考えていた。

だって全寮制と言えども別に山奥にあるわけではないし、市街地にもバスですぐの立地。
そして俺を案内してくれた人は腹黒副会長?とかではなくて普通に人の良さそうな先生だったし、季節外れといえど俺だって「実は理事長の親戚ですごい美貌を隠し持っている」なんてことは全然ない。
人混みに紛れれば某絵本のウォー○ーを探せくらい俺を探し当てることは難解だろうし、親戚に学校経営している人もいない。

聞いたところによるとここの生徒会も至って普通の選挙で選ばれ、至って普通の人たちが運営しているという。
俺様とか無邪気な双子とか無口ワンコな生徒会役員も親衛隊も、校内のゴタゴタをピシッと取り締まる凛々しい風紀委員も存在しないのだ。
いや、風紀委員会はあるのか。

でもまぁ至って普通な、そんなに目立った特徴もない…と言ったら失礼だろうが、そういう学校だと聞いている。
こんな俺でも編入試験をパスできるくらいなのだから、偏差値もそれほど高いという訳じゃあないんだろうなぁ。

だから悪いけど、そういうBがLするような話はお土産に持ってけそうにないよ兄ちゃん。
ここに来る前、社会人の兄にあれやこれやとプレゼンという名の謎のレクチャーを受け、「何かそれっぽい話があったら逐一連絡するように!」と言い残して海外に赴任していった兄。
あの大量の蔵書は結局持って行ったのかな。それとも実家に…。まぁ俺には関係ないからいいや。

そんなこんなでスーツケースとリュックを背負ったまま部屋の扉をぼうっと眺めつつ今後の学園生活について考えを巡らせていると、部屋の中から人が歩いてくるような気配がした。

そうだった、相部屋の人がいるんだったっけ。
合鍵を渡されていたからそれで開こうと思っても、ポケットに入れたはずのそれが中々見つからない。
そうこうしている内にも中からガチャリと解錠される音がして、キイィッと重たそうな扉が開かれた。

扉が開かれてから、ようやっと自分の鍵が見つかる。
…申し訳ない、開けさせてしまったと思いながら開けてくれた部屋へ足を踏み入れるともう開けてくれたらしい人は後ろ姿で、スタスタと自分の部屋らしきところへ引っ込んでしまった。

挨拶…できなかったな。
忙しいんだろうか。イライラしてるとか?もしかして、部屋間違えたとか?
でも開けてくれたということはきっとここが俺の部屋で間違いないんだろうし、ようく見なくても玄関の靴は俺のを除けば一人分のようだった。

寮の管理人さんが言ってたっけ。確か、「ちょうど二人分の部屋を一人で使っている子がいるからそこを使ってね」とか何とか。
もう一度ちらっと扉の外のプレートを確認してみても、やっぱり教えてもらった番号と合ってる。
うーむ、この部屋で間違いなさそうだなぁ。

さっきの人はもしかしたら人見知りなだけかも知れないと思い、俺は靴を揃えてから部屋の奥へと入っていった。

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