mitei あてにならない | ナノ


▼ 15.side-???

side.???

ザッ、ザザッ…。

『あー、それ俺が持つよ』

『マジ?あ…がと』

『全然?というかコレ、どこに持ってくんだっけ』

『えっとね…ちょっと…って…コレは…』

『おっけー!えと、道案内してもらってい?』

『いいけど、シ…くんは?も…戻って…んじゃね…の?』

『すれ違いになったら連絡するし、大丈夫だと思うよ』

『そっか、じゃあ行こうぜ!』

(………人がちょっと職員室に呼ばれてるうちに)

「チッ。こいつはちょっと近づきすぎだな…」

「あれ?君、今舌打ち…」

「してませんよ?では先生、この辺りで。お話はもういいですよね?じゃあ失礼します」

どこかへ急ぐように、長い脚で颯爽と職員室を後にした彼を見送って一人の職員が溜め息を吐いた。

「あ、ちょっとぉー!…気のせいかぁ」

「何か気になることでも?」

「ああいや…本当に気のせいだと思うんだけど、耳にイヤホンみたいなの見えた気がしてね。音楽でも聴いてたのかなって」

「まさかぁ!先生とのお話の最中でしょう?彼に限ってそんなことしませんよ」

「ですよねー!あはは!」

彼に限ってそんな態度は有り得ない。
だって彼はこの学園イチの…まぁ多少問題は起こすものの…成績優秀者であり、品行方正な生徒なのだから。そして何と言っても、彼はこの学園の理事長の…。

「ま、気のせいだよな」

特にここ最近の彼は機嫌がすこぶる良いと聞くし、もう問題になるようなことを起こすことは無いだろうと彼らはまた職務に戻った。



「おーいしょっとぉ!これで全部?」

「おお!あんがとな!助かったわ」

「全然!じゃあ教室戻って、ぉあっ?」

「ぷっ、まぁた変な声出してやんの」

友達の雑用を手伝って荷物運びを終え、教室に戻ろうと廊下に出たら何かに…というか誰かにポスッとぶつかった。
嗅ぎ慣れた匂いに、馴染みのある高さと、降り注ぐ聞き馴染みのある声。

顔を見なくても、誰だかすぐに分かってしまった。

「あ、ゴメンぶつかっちゃって。てか、もしかして待たせてた?」

「全然?おれも今用事から解放されたとこ。じゃ、帰ろうか」

「うん。あ、待って荷物」

「教室だろ?一緒に戻るよ、行こ、ショウゴ」

シキに手を引かれて教室への道を歩み出す。
と同時に、思い出したように俺は振り返った。
荷物運びを共にした友達に声を掛けるためだ。

「なぁ、俺たち教室戻るけど、」

一緒に、という言葉を放つ前に、俺の前方から声が降り注ぐ。

「彼、この後別のとこに用事があるらしいよ」

ええ、それは聞いていない。
「そうなの?」と彼の方を振り向くと、友達はこくこくと全力で首を縦に振っていた。真顔である。アレ、そんな急ぎの用でもあったんならもっと早く言ってくれれば良かったのに。
というか首、大丈夫か?振り過ぎじゃない?

ちょっと心配になるな…。そんなに全力で振らなくても伝わるのに。

ふと、くいと手を引かれて前方に視線を戻すと、少しだけ不満そうなルームメイトの顔があった。なぜだ。
俺、知らないうちに何かやらかした感じ?

「どったん?」

「…別にぃ」

「…拗ねてる?」

「そう見えます?」

「うーん、分からん」

「正直、そこも大好き」

「学校でも口説くのやめてよ」

「じゃあ早く帰ろ。部屋ならいいんだろ?」

「そういう意味でもないんだけどなぁ」

結局何で拗ねたのかは分からないまま、一瞬で機嫌を戻したらしい彼に手を引かれて俺は教室へ戻っていった。

「…ショウゴ、ちょっとどころかかなり無防備じゃんね」

「ほぁ?」

「いいや、おれが居るから」

「はぁ…?」

「今晩なに食べたい?」

「えぇーっと…ハンバーグ的な」

「的な、ね。りょーかーい」

その夜、「無防備」という単語についてネット先生に聞いてみたが、彼の意図するところはやっぱり掴めないままだった。

ちなみにハンバーグ的なハンバーグはめちゃくちゃ美味かったし、普通にハンバーグだった。

チーズも入ってて思わず「天才か?」と上から目線で呟いてしまったが、彼と言えばいつも通り満足そうに口角を上げて俺を見つめるだけだった。

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