mitei あてにならない | ナノ


▼ 13

俺的世界七不思議。
シキは、俺に恋愛感情があるらしい。

初めはぶっちゃけ半信半疑だった。いくら真面目な彼だってそんな嘘吐くのかと思ったりもしたが、あんなに真剣な顔を見てはその考えもすぐに恥ずべきものだったと改めるしかなかった。
でもまだ分かっていないんだよなぁ…。何がって。

俺なんかのどこを好きになったのかってこと。

じゃあ本人に直接訊いてみればいいじゃんって思うけど、この台詞を彼に言おうものならマジで俺のこと好きなのかなって不安になるくらいのすごい形相で睨まれるだけだ。
或いは真顔になる。「お前はそんなことも分かんないのかよ」とでも言いたげな雰囲気を纏って、その後何かを考え込むようにして顎に手を当てる。

それでもやっぱり、教えてはくれない。
ただ彼が本当に俺のこと好いてくれてるらしいってことは、日常生活でも嫌ってほど教えられるけど。
特にあの質問をして、真顔で考え事をした後に。

眼差しでも、態度でも、声音でも、シキは俺に優しい。
初めは俺にだけじゃなくて全員にそうなのかと思ってクラスメイトに確認してみたら、全員が全員ブンブンと首を横に振るだけだった。
登校初日に俺に話し掛けてきた三人組もそう。

彼らとはあの謝罪の後何かと話すようになって、俺としては結構仲良くなれたんじゃないかと思っている。
その彼らも、みんな同じように「あんなに穏やかな彼は見た事がない」と口を揃えて言う。

そもそも笑顔どころか、誰かに冷ややかでない視線を向けているだけでも珍しいことこの上ないのに、とか。

そういう彼の客観的なイメージを聞けば聞くほど俺の中では?マークが量産されていく一方だ。
だって俺の中のシキは大体いつも微笑っていて、穏やかで、優しくて、世話焼きで、たまによく分からない発言をするがそれも含め一緒に居て楽しいと思える。

殴られたことなんてもちろん一度だってなければ、邪険にされたこともない。
そういう提案をされたことはあるが、それは俺の学園生活を心配してのことだったし。

そんなシキが、俺の事を好きだという意味が分からない。
てんで分からん。友達としてならまぁ、俺も彼のことが好きだし何も不思議に思わない。

だけどレンアイカンジョウって。誰がどんな人を好きになろうがそれはその人の自由だと思うが、その対象が俺っていうのがどうにも…。
俺にそんな好きになる要素ってあるだろうか。例えば?

例えば。
………人の悪口を言わない、とか?

搾り出してそれくらいの良いところ?は思い浮かぶが…それだけで?
「好き」だと言われたことは素直に嬉しいし、触れられる度に胸の辺りがほわほわするけど、いつも「なんで俺?」という疑問が付き纏う。

シキはマジで、どうして俺のこと好きになったんだろう。

prev / next

[ back ]




top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -