「やっほーアキくん」
「いやいつでもとは言ったけど」
まさか翌日に呼び出されるとは思わんよな。
正確には公園で別れてから、数時間後。
そんで場所は…。
「ルイさん、ここどこ?」
「どこて…見た通り。ゆーえんち?」
そりゃまぁ、見れば分かる。
笑顔で行き交う人々にカラフルな風船を配るマスコットキャラクター、絶叫マシーンから時折聞こえてくる「キャー」だとか「ワーッ」なんていう声とそれから、ちょっと遠くに見える大きな観覧車。
そう、ここは遊園地。それは分かる。
何なら集合場所に指定された駅で推測もできた。だけど…。
「なんで?」
「まぁ夏休みやし、遊びたいけど…海は…人多いし」
「ここも多いけど」
「脱がなアカンやろ?海やったら」
「脱いだらアカン感じ?」
もしかして背中に龍か虎でも飼ってる感じ?
「オレは別に刺青とかないけど。アキくんが」
「え、俺?俺は龍も虎も飼ってないよ?」
「アキくんが飼ってたらびっくりやわぁ。ま、行こか」
はぐらかされた。なら結局何が問題なんだ。
まぁ遊園地も楽しいからいいけどさ。
こんなところに来るのって何気に久々だし、ちょっとうきうきしちゃうな。
ルイも多分、思いっきり遊びたかったんだなぁ。
「なぁルイ、何から乗…る?」
隣を見ると、彼が居ない。と思ったら…。
「え、高校生?見えないねー」
「背高くない?何センチ?」
「一人で来たの?一緒に回らない?」
まだそんなに進んでないのに、入り口付近で絡まれていた。
あぁ。
遠目からでもやっぱりルイはルイって感じ。
ちゃんとした私服初めて見たけどモデルさんみたい、とか言ったら怒るかな。黒のスキニーパンツに柄が入った白のTシャツと、ジャケットみたいなの羽織ってる。スキニーのせいで際立つのか、やっぱり脚が長い。
シンプルなのにいつもよりカッコいい気がする…。くそぅ、俺が同じコーディネートしてみても絶対あんな風にはならないだろうな。
…そりゃ囲まれるわ。
顔がいつもよりちょっと怖いけど。
「通して。連れおるから」
「「「えー」」」
「オレ今日デートなんで」
「「「えー!!」」」
ちょっと遠くから見守ってると、ルイが何かを言ってこちらへ歩いてきた。断ったのかな。
何て言って断ったんだろう。
絡んでた子達の悲鳴だけ聞こえたが…。マジで何を言ったんだ。
「ルイ、あの人達は」
「知らん。早よ行こ」
ちょっとご機嫌ナナメ?
でも一応は俺の歩幅に合わせて歩いてくれる辺り、いつも通りのルイで安心した。
「腹減ってる?アキくん」
「んーん、まだ。ルイは?」
「オレもまだ。ほなアレから乗ろう」
「おー!て、あのさぁルイさんや…」
「どしたんアキさんや」
「手、繋ぐ必要ある…?」
ふと視線を下ろすと、いつの間にか繋がれた手。見た目は華奢に見えるのに、触ると結構ゴツい手と、俺の汗ばんだ手が繋がれている。
暑いんだけど…。
「んー、アキくん迷子んなったら困るから、必要かな」
「バカにしてんのか」
「さぁいこー!」
先程の不機嫌さはどこへやら。
あからさまに楽しそうな雰囲気を醸し出したルイにつられて、俺も歩き出す。
周囲からの色んな視線が痛いけれどそれも気にならないくらい、今は目の前の自称無気力ヤンキーが眩しい。
ま、いっか。
俺も何だかんだ言って結構うきうきしてるし。
だけど。
これは友達同士の遊びなんだろうけど何か…ちょっとデートみたいだな、なんて思ったのは秘密だ。
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