「なぁイチ、奥歯見せて」
「は?やだよなんで」
「差し歯ってホントかなと思って」
「差し歯?お前はまた何言ってんの…」
「あのさ、イチは昔ヤンチャしてただろ?それでケンカした時に折れたから今でも奥歯は差し歯なんだよーって、教えてもらった」
「サンのやつまた適当なことを…」
「いや、ニノに聞いた」
「ニノかよ!何で…あ。あぁ…。もしかしてあん時のこと根に持ってんのかなあいつ」
「何したのイチ」
「女子から逃げる時の盾にした」
「謝ったのかそれ」
「で?差し歯が本当か知りたいと」
「聞いてる?ちゃんと謝っ…てないなコレ」
「お前ってホント馬鹿な。差し歯だったらとっくに取れてるわ」
「取れるの?」
「………はぁあ。しゃあないからちゃんと実証してやろう。今日は解説付きでやるからきちんと聞くように」
「何を?」
「さぁ帰るぞ。明日は午後からだから安心だな?」
「何が?」
「呪いたければ自分のチョロさと愚かさを呪えよ、シィ」
「な、何で…?」
「楽しみだなぁ」
「え、あの、イチ…さん?」
「何なら本物の歯が取れるまでキスしてみようか」
「ひぇっ…」
「何してんだ行くぞ」
「えっ、やだ」
「やだじゃない、自分から言い出したんだろ」
「俺そんなこと言ってないぃ」
「気になるんだろ、教えてやるっつってんだ感謝しろよ」
「実地じゃなくて口頭でいいです…」
「分かった、口頭な」
「絶対分かってないやつだ…」
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