拝啓、明日へ。
俺はあなたの背中を追うけれど決してあなたに出会うことはない。
あなたが来ることを息苦しいほど恐れても、手を伸ばすほどに望んでも。
あなたに会えることはない。
追いついたと思ったそのときにはもう、明日はまたひとつ先へ漕ぎ出していて、俺が立つのはいつだって今日なのだから。
俺はずっと、あなたの背中を見ている。
そして昨日は、俺の背中を見ている。
俺はたまに振り返って昨日に目を凝らすけれど、その中にあるものはあまりにも多様で感情の波に飲まれてしまいそうになる。
明日への渇望で俺は生かされ、そして昨日の連続にやがて俺は殺されるのだ。
あなたを通り過ぎた俺が作り出していく昨日が、足跡と共に続いているんだ。
俺はずっと、あなたの背中を見ていると言った。
すまない。
それは嘘だった。
目を逸らすことも数え切れないほどあった。
あなたに会うことは決してないけれど、それでも先を見せてくれることを感謝している。時には憎く思うこともあるけれど、それもあなたを愛しく思えばこそだと。
そう、胸を張って言えるようになりたいと願う。
捨てやしない。
できっこなかったんだ。
全ての感情が、あらゆるところに散りばめられていることをきっと、忘れはしないから。
明日へ。
やがて俺を殺す昨日は俺の背中を支えてくれるよ。
そして俺は今日というところから、またずっと、あなたを見ている。
敬具
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