ANOTHER's story

∴ 04


「ちぃ・・・」


呼びかけられてグイッと腕を引かれ、広い胸の中に閉じ込められた。


「チカちゃん?」


「すまねぇ、迷惑かもしれねぇけど、俺ぁちぃが好きだ。
今日、俺以外の男が傍に居るって知って、心ん中グチャグチャになった。ずっと俺の傍に居る、子どもだと思ってたのに・・・」


「チカちゃん、私ももう二十歳よ?お酒も飲めるし、自分の意志で結婚も出来ちゃう」


そう言って腕をチカちゃんの背中に回した。


「私はずっと好きだったよ、チカちゃん。
でも諦めてた、女として見られて無いの知ってたから。

でも・・・素敵な誕生日プレゼントになったわ!すごく嬉しい・・・ありがとう、好きになってくれて」


そう言って顔を胸に寄せると、チカちゃんはぎゅっと抱きしめてくれた。


「どこかに行ってしまう前に気付けて良かったぜ」


しみじみとチカちゃんはそう言って、私の後頭部にキスをした。


「な、な、チカちゃん!」


「なんでぇ!?」


「今、あ、頭に・・・!」


「ああ?それくらい普通だろ!」


「馬鹿バカ、チカちゃんのエッチ!」


「なっ・・・!?くくっ、やっぱりちぃはお子様だぜ」


「酷い、もう、チカちゃんの馬鹿・・・」


頬を膨らませて睨むと、チカちゃんはにやりと笑って見せる。


「ちぃ、気絶すんなよ?」


不穏な言葉と共に、屈められたチカちゃんの上半身は、チカちゃんの手によって上向かされた私の顔に覆いかぶさって、唇が合わさった。


「今日は触れるだけにしておいてやるぜ」


始終ポカンとしていた私を余所に、チカちゃんはキスした唇をペロリと舐めて見せる。
その仕草にカーッと熱が込み上げて来て、私はダダダっと玄関まで駆け寄った。


「じゃあな、おやすみ、ちぃ」


そう詫びれもせず、チカちゃんが手を振るのに、私は投げつけるようにおやすみ、と告げて中へと入った。
後ろ手に、玄関ドアを閉めると、ズルズルとその場に座り込んだ。


「千雪?お帰りなさい。
何やってるの?そんなところでって・・・あら、アナタ顔が赤いわよ?」


「あー、お酒飲んだから」


「もう、ほどほどにしなさいよ?」


出向かに出てきたお母さんに、赤いのはチカちゃんのせいがほとんどですとも言えず、嘘じゃないけどホントでもない答えを返した。


「長曽我部さん家の元親君、迎えに来てくれた?」


「うん、お店に来てくれたよ。玄関入るまで見送ってくれた」


「そう。やっぱりいい子ね、元親君。またお礼言わなきゃ」


アナタも、もうお風呂入って寝なさいと、言づけながら、寝室へと消えていったお母さん。
私の回答を不審に思って突っ込まれなかったことにホッとして、明日のためにお風呂に向かった。




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