ANOTHER's story

∴ 02


更と雑談していると、同じクラスの生徒だった男―――政宗君が近づいて来て、近くに腰を下ろした。


「Hey、ちぃ。It is a long time.(久しぶり)俺に会えなくて寂しかっただろ?」


「政宗ー、あんた相変わらずね。そんなだとまた片倉先生、頭抱えるわよ?」


「更!お前も久しぶりだな。綺麗になったな、お前」


懐かしい二人の掛け合いに小さく笑うと、二人が声をそろえて同じセリフを言った。


「「何が可笑しい!」」


「2人とも数年ぶりなのに息合い過ぎ!そう言えば、私、昔二人は両想いだって思ってたなぁ」


「ちょっと、千雪、それは性質の悪い冗談よ!」


「それは無い、絶対無い。Impossible!!」


「ちょっと、政宗!それどういう意味よ!」


これまた二人が必死に違うという姿に、懐かしいとしみじみ感じる。


「あのねぇ、コイツは千雪のことが好きだったの。だからいっつも私たちのとこ来てたの!」


「おい、更!」


「何、政宗。あんた、まだ千雪が好きとか?」


「・・・・・・」


「・・・・・・マジ?」


「・・・・・・え?」


「悪ぃかよ!俺は高校の時からずっとちぃが好きだ!!

ちぃ、こんな形で悪いが、・・・I love you・・・」


政宗君が突然真剣な顔をして、告白をしてきた。

このあまりのことに、驚いて声も出ない。
周囲の同じクラスの人も、この騒ぎをいつの間にか知って、私たちを囲むようにして見守っている。


「わ・・・私・・・」


決して今日初めて飲んだアルコールのせいだけじゃなく、頬が染まるのが分かった。
頬を押さえて俯いていると、政宗君が目の前に移動してきていて、私の両手を握った。


「なぁ、ちぃ。返事は明日で良い。今夜考えてくれ。だから、楽しく飲もうぜ?

お前らも、聞き耳立ててないで、お楽しみはこれからだぜっ。Let’s party!」


政宗君は、あっさりと場の空気を換えて、同窓会を仕切り直す。
そのことに感謝しながら、私もそっと席に戻った。


「もう、更が変なこと言うから、おかしなことになっちゃったじゃない」


「え〜、私のせい?ごめーん、許して」


「もう、良いよ〜。でも本当に驚いた!」


「私も、まだ好きだったとは。恐るべし、伊達政宗」


「本当に、私なんて取りえなんか無いのに、何が良いんだろ・・・」


「政宗には、千雪の良いところがたくさん見えてるんだよ」


政宗君の告白後やたらと喉が渇いて、飲み物が進んでグラスを片手に更と話し込んだ。
首を傾げていると、更はお手洗いに席を立ち、いつの間にかさっきのギャラリーを皆、引き連れて行って、こちらが静かに過ごせるように政宗君が少し離れた場所で飲んでいた。


「明日か・・・」


「何が明日なの?おねぇさん♪」


私の呟きに割り込むように入ってきた大学生らしき男3人。
突然現れて、異様に親しげな口調で話しかけられる。


「あなたたち・・・何の用ですか?」


「俺たち今、超暇してんの!だからさ、おねぇさん、遊ぼうよ」


「ぃやっっ!」


男の一人が手を取ろうとしたのを、思い切り弾いてしまった。


「っってぇー。おい、何すんだよ!」


途端に表情を一様に硬くした男たち。


「こりゃ、オトシマエ、付けてもらわねーと」


一人がそう言うと、他の男たちも下卑た笑いを顔に浮かべて、肩を掴んできた。
その時に頭に浮かんだのは、警察でもなく、政宗君でもなく。
困ったときはいつも助けてくれた、チカちゃんだった。

チカちゃん、助けて!

ここに居るはずのないチカちゃんにSOSを送る。
願いながら、男たちが場所を変えようとするのに抵抗した。

同窓会メンバーは、今や政宗君を夢中で取り囲んでる。
そんな彼に助けなど届きようも無くて、誰も見てない内にどこかに移動させられる。
無理やり立たせられると、これまで平気だったのに、足元がふらっとして、想像以上に酔いが回っていることが分かった。


「あっれ〜?足元がふらついてるね。危ないから、俺がこっち支えてやるよ」


「なら俺はこっち」


そう言って男たちは私の両サイドをきっちりと固める。

同窓会で使っていた部屋を出て、隣の個室に連れ込まれることが分かり、身体が震えた。
これから何が待ってるか、想像に難くない。
手を振り回そうとするも、がっちり組まれ、全く動かせなかった。
それにサッと血の気が引いて、身を捩るようにして掴まれた腕を解放させようとする。


「ふはっ、必死んなちゃって、可愛いじゃん」


男がそう言って笑ったあと、何故か顔を歪ませる。




back